●一番こじれやすいのは密室化した2者関係
斎藤:若い夫婦やカップルの間でのDVは多いですからね。若い世代ほど男尊女卑が強いという統計もある。それはそれで心配です。団塊母と娘に話を戻しますが、団塊世代もすでに70代を迎え始めています。新たな問題は?
信田:一つは先に触れましたが、母が祖母となって存在感を増していること。共働きの娘に代わって孫の世話をする中で、その子育てや教育に積極的に関与する。面倒を見てくれるから文句は言えないものの、ターゲットが孫=自分の子どもに移ることに恐怖や嫌悪感を感じる娘は少なくないはずです。一方で、超高齢化社会の今、団塊女性が自分の母親の介護をしているケースも少なくなく、老いた母に対して「娘としての怒り」を覚えることも。母娘問題はもはや母娘だけでなく、母、娘、祖母と3代を視野に入れて考える時代になったと言えるでしょう。
斎藤:確かに、介護は母娘関係において最大の問題になるのでは。母親を施設に預けられない娘が多いですよね。マゾヒスティックコントロールが効いているから、「親を捨てる」と罪悪感を覚えてしまう。
信田:女性は人間関係をつくるのがうまいから、施設に入ったら入ったで案外楽しくやるんですけどね。ただ、娘には不幸そうに振る舞う。これまで自覚していなかった母への感情が、介護をきっかけに表面化するケースは少なくありません。なのに、罪悪感が身体化されているから「親に対してこんな感情を持つなんて」とつらくなる。介護という捨てられない状況になったなら、ますます母親とは1対1にならないことが重要です。
斎藤:母娘に限らず、密室化した2者関係が一番こじれやすい。夫や父親に電話やメールを仲介してもらうだけでもいいから、ワンクッション入れて密室化させないことですね。ただ先に指摘しましたが、男は母娘問題の本質が感覚としてわからない。下手すると母親に取り込まれて「娘思いのいいお母さんじゃないか」とか言っちゃったり。
信田:娘にしてみたら、それが余計にショックなんですけどね。