「社会的な課題を解決したい人は、心のどこかで『何かおかしい』と感じているはず。その違和感を丁寧に言葉にして育ててほしいのです」(同)

 社会起業家のプラットフォームをつくろうという会社もある。東京都新宿区に本社を置くボーダレス・ジャパンだ。

 社会問題を解決しながら事業を収益化し、拡大させることにはやはり、困難を伴う。だから、ビジネスプランを事業化する人には最大で3千万円の起業資金とともに、マーケティングのスペシャリストなど必要な人材・ノウハウも提供する。ソーシャルビジネスの成功事例を量産し、世界に広げていきたい。

 日本政策金融公庫の2016年度のソーシャルビジネス関連融資実績は9644件、717億円。件数・金額ともに同公庫発足以降過去最高を更新した。このうち、NPO法人向け融資は1476件、86億円と、これも過去最高。同公庫は17年4月、国民生活事業本部にソーシャルビジネス支援グループを新設し、資金面の支援のほか、経営ノウハウの発信や先進的な取り組み事例の紹介など、情報面のサポートの充実にも力を入れている。

 ただ、前出の社会起業大学・瀬田川さんは言う。

「『起業』はあくまでも手段の一つだと捉えています」

 目標やビジョンを実現するためにできることは他にもある。志を共有できそうな社会的課題に取り組む既存のNPOにボランティアとして加わったり、勤務先の会社で新規事業として提案したりすることも、社会起業家へのステップを踏む現実的な選択肢に加えるべきだ、と。(編集部・渡辺豪)

AERA 2018年2月5日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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