「流行り歌を歌う意識があまりない」と話す近藤真彦。怒濤のバブル期から20余年。鬱屈した何かを抱える日本社会と歩調を合わせるように、味と深みを増している。
虚飾を寄せつけない人だ。撮影スタジオで渋い大人のオーラを放つ近藤真彦に接し、そう感じた。
若い頃の「ギンギラギン」も絵になっていたが、いまはあくまでも自然体。スタジオに入ってきただけで、ピンと張り詰めた緊張感と周囲をやわらかく包み込むような安心感の両方を醸し出す。
抑えたトーンのスーツとネクタイがよく似合うのは、内面からわき出るゴージャスな華やぎが身体のパーツごとのラインを際立たせるからだろうか。カメラの前では動作にも表情にも無駄がない。引き締まった表情と陰影に富んだ視線。どこか「わびさび」に通じるはかなさがあって、引き寄せられる。新鮮で色あせない「艶」がそこにあった。
撮影後、ネクタイを緩めてインタビューに応じるときは一転、気さくな人柄がにじみ出る。