竹内智香(たけうち・ともか)/1983年12月生まれ。スノーボードアルペン種目選手。ソルトレーク、トリノ、バンクーバーと冬季五輪に続けて出場し、2012年12月にはワールドカップで初優勝。ソチ五輪では日本人女性スノーボード選手で初のメダルとなる銀メダルを獲得。5度目の五輪となる平昌では自身の集大成として金メダルを目指す
滞在中のアメリカでの食事は自炊。この日は野菜中心の鍋をスタッフと食べた(写真:本人提供)
ソチ冬季五輪で銀メダルを獲得したスノーボード女子アルペン・竹内智香選手が「AERA」で連載する「黄金色へのシュプール」をお届けします。長野五輪を観て感動し、本格的に競技をスタート。2018年2月の平昌五輪では念願の金メダル獲得を目指す竹内選手の今の様子や思いをお伝えします。
* * *
海外生活が多い中、合宿でも自炊することがほとんどです。アスリートにとって食事は当然大切ですが、それを痛いほど感じた出来事が過去にありました。
ソチ五輪が終わった後にブルガリアに行った時でした。急に喉と顔がパンパンに腫れて、息もできなくなり病院に運ばれました。パーティーで食べた海鮮がダメだったのか、何が理由なのかはその時は全然わかりませんでした。さらに今度は太陽に当たっても症状が出るようになってしまって、帰国して病院に行っても原因を特定できないまま半年ぐらいが過ぎました。
その間は、食べ物自体を口にするのも、日に当たるのも怖くて外出も少なくなっていました。だから外に行くにも帽子をかぶってサングラスをかけて、さらに日傘も差してという完全防備。なかなかつらい毎日でした。
薬も飲めば飲むほど集中力がなくなる。何をやっても治らないので、ある時、断食をしました。すると、ピタッと症状が止まりました。断食で治ったということは、やっぱり食べ物が原因だと思い、今度はアメリカで血液を調べてもらったら卵と乳製品、小麦のアレルギーだということがわかったのです。
以降、一切口にしなくなった途端に、体の調子が戻りました。私自身、何を食べても大丈夫だとこれまで思い込んできたのですが、想像以上に体内は敏感だった。思い返せば、一人の時は質素な食事が好きで、和食中心での食生活でも十分な体質でした。ただ、メダリストになってからは、外食に誘われたりするなどで完全に栄養過多になってしまっていたのだと思います。
今は海外でも食材に気を使いながら買い物をし、外食をするときには和食や焼き肉を希望することが多くなりました。スーパーに行っては成分表を見たり、同じ野菜でもオーガニックのものを選んだり。あらためて、食べることが体づくりにつながる。そんなアスリートとしての基本を理解した経験でした。(構成・西川結城)
※AERA 2017年11月6日号