女性の収入は、忙しい時期にはほぼ毎日働く仕事と、公的年金をあわせて月10万円ほど。値上げは痛いし、いつまで働き続けられるかもわからない。かといって、今さら引っ越すわけにもいかない。

 資材の高騰や人手不足で、さらに修繕費が上昇する心配もある。けれど年金暮らしの人が多いマンションでは、修繕積立金の値上げにも、おのずと限界がある。

「どこかで修繕をあきらめて、『マンションが朽ち果てても住み続けるよ』と言うしかなくなるんじゃないかな」

 2020年末時点で、マンションのストック戸数は全国に675.3万戸ある。

 かつての「住宅双六」では、賃貸マンションから分譲へ、そして一戸建てに住み替えれば「上がり」とされた。

 1980年度には、マンション区分所有者のうち6割近かった「住み替え」を考えている人は、近年は2割にも満たない。一方、この女性のように「ついのすみか」として永住を考える人は、6割を超えるまでに増えた。

 しかし、国交省の推計では、2020年で103.3万戸ある築40年超の「高経年マンション」は、20年後には404.6万戸へと急増する。

 マンション総合調査によると、将来の大規模修繕に向けた修繕積立金が計画よりも不足しているマンションは、18年度時点で34.8%ある。

【朝日新聞デジタル連載 「高齢化するマンション」】

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