マンションは最寄り駅から徒歩5分。繁華街にも近く、立地はいい。

 しかし、ハザードマップでは、河川の氾濫などで浸水が想定される地域にある。電気設備は1階にあり、浸水すればエレベーターも使えなくなるはずだ。

 年に1度は防災訓練をしているし、車いすを利用しているなど、階段を使えない人のリストも管理組合が作っている。

 しかし、人の助けがあれば歩くことができるのか、あるいは寝たきりなのかなど、詳細までは把握していない。

 住民同士は没交渉に近い。顔をあわせたらあいさつするように心がけてはいるが、相手がどこの誰なのか、ほとんどわからない。

「そもそもこれだけ高齢者ばかりになって、いざというときに誰が助けられるのだろう、とも。防災が必要だといっても、何から手をつければいいんでしょう」

 女性が住んでいるフロアでは、約15戸のうち半数は、高齢などの理由で輪番の管理組合役員を引き受けるのも難しくなった。

「住民の高齢化に対して、どうすればいいのか。手が回らないうちに、あっという間に高齢化が進んでいく印象です」

 国土交通省のマンション総合調査(2018年度)によると、マンションに住む世帯主は60代以上がほぼ半数を占める。80年代までに完成したマンションに限れば、60代以上は4分の3以上にものぼる。

■建物も高齢化、浮上する積立金値上げ

 住民が年を重ねるのと同様に、建物そのものも年を重ねていく。

 女性は、高齢者施設に入らなければいけなくなるまで、老後もできればずっとここで暮らしたいと思っていたという。

 少なくとも築30年のころまでは、それで問題ないと考えていた。管理費なども高くはなかった。

 しかし、少し前に急きょ共用部の修繕工事をするなど、不具合も目立ってきた。これから、水道管などでもトラブルが増えそうだ。

「人間が年をとると具合が悪くなるように、マンションもそうなんですね」

 女性のマンションでは、今後の大規模修繕に向け、修繕積立金と管理費をあわせて月数千円値上げするという話が浮上している。

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修繕積立金の値上げの限界