ところが停戦3日前の2月25日、ダーランの米軍兵舎の食堂に「スカッド改」が偶然命中、警報を無視して昼食を取っていた米兵28人が死亡、97人が負傷した。
金正恩朝鮮労働党委員長は「今後も太平洋を目標とした弾道ミサイル訓練を多く行う」と述べている。今後、何度もJアラートが広い地域の住民に避難を呼びかけ、空振りに終わることが続き、「警報慣れ」が生じる結果になりそうだ。
●1都3県外しの不自然
そもそも警報システムは、防空壕や地下室のシェルターと一対になって意味がある。政府、自治体はJアラートを設けても、有効な隠れ場所は用意していないのだから、片足に靴をはいたような間の抜けた形で、住民が「どうしろというのか」と当惑したのも当然だ。
また今回のJアラートの対象地域に長野県や茨城県が入っていたのに、東京都や神奈川県が入っていないのは不自然だ。もしミサイル攻撃を受けるなら、横須賀、厚木、座間など沖縄に次いで米軍基地が多い神奈川県や在日米軍司令部がある横田基地を含む東京都が狙われる公算が大きい。ミサイル攻撃ではなく、故障したミサイルが落下してくることへの警戒だとしても、長野県などにはその危険があり、南関東は安全と見る理由はない。東京・市谷の防衛省にミサイル迎撃用の「PAC3」を配備しているのとも矛盾する。警報を出せば、首都圏でパニックが生じかねない、とか米軍基地への反対運動が起こる、といった官僚的発想があるなら国民保護への真剣さを欠いている。
今回の北海道越えのミサイル発射で日本はミサイル防衛に一層の力を注ぐことになりそうだ。イージス艦のミサイルシステムを陸上に配備する「イージス・アショア」は2カ所で約1600億円だが、それだけではない。いま4隻のイージス艦がミサイル防衛用の「SM3ブロック1A」(1発16億円)を各8発搭載しているが、他のイージス艦2隻はその進歩型「SM3ブロック2A」を積むよう改装計画が進み、さらに2隻(1隻1700億円余)の建造が決まっている。「ブロック2A」の価格は今の「1A」の2倍はすると見られる。