対ミサイル用ミサイルは、不発や故障もあるから、1目標に対し2発撃つのが普通で、4目標に対処すれば任務終了だ。北朝鮮は旧式の「ノドン」(火星7)だけでも約300基を持つと見られる。核弾頭は20発程度としても、通常(火薬)弾頭のものとまぜて発射されれば区別ができない。海上自衛隊で「弾の数が少なすぎる」との声が出るのは当然だろう。仮にイージス艦8隻に「SM3」の新型を16発ずつ積み、1発30億円余とすればそれだけで約4千億円になる。

 イージス艦が撃ち漏らした弾道ミサイルを、落下直前に破壊することを狙う航空自衛隊の「パトリオットPAC3」は発射機34基に各4発搭載しているが、これは射程が20キロ以下で1地点しか守れない。射程を約30キロに伸ばした「PAC3MSE」に換装する予算は16年度第3次補正予算と17年度予算で1056億円がすでに付いており、来年度予算の概算要求にも205億円が計上されている。が、1地点しか守れないことは変わりがない。

●地下などへの避難訓練

 ミサイル防衛には、ほぼ同時に多数を発射されれば突破される、という弱点があるから、「敵基地攻撃能力の保有」を自民党政務調査会などが唱えているが、移動式発射機に載せ、山間部のトンネルなどに隠れている弾道ミサイルの位置を常に確実に把握することは米軍にもできない。目標の位置が分からないと攻撃はできないし、もし分かれば米軍、韓国軍が圧倒的な航空戦力や、射程300キロないし500キロの「玄武2」ミサイル1700基で攻撃するから、自衛隊に出番はない。

 それに莫大な予算をつぎ込むよりは都市で地下街などに避難する訓練をしたり、それがない地方では防空壕を掘ったりしたほうが、死傷者を減らす点で少しは現実的かもしれない。(軍事評論家・田岡俊次)

AERA 2017年9月11日号

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