実際、宇野さんもロケットを作るサークルの代表を務めたり、月面探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」の開発メンバーになったりしつつ、アルバイトもこなした。
早く卒業できれば学費が浮く。成績優秀なので大学院進学や就職でも有利だ。それなのに、活用が進まないのはなぜか。
同様に早期卒業制度を導入している東京工業大学副学長の水本哲弥教授は言う。
「実際に早期卒業を選んだのは、対象者の3分の1程度。多くの学生は、早期卒業に対して意外に慎重です。同級生と学年が離れるのがいやだという学生もいます」
東工大では昨年の入学者から早期卒業対象者が全体の5%から1割程度へと大幅に広がった。「成績が一定のレベル(おおむね平均90点)以上」など絶対評価で資格を得られるようになったからだ。成績の条件をクリアして早期卒業の対象になったことを3年生の5月に本人に通知する。
●早期卒業=成績優秀
スリランカの留学生ラネプラ・ヒュウェッジ・ネランジトさん(25)は早期卒業制度を知らなかったが、通知を受けて利用を決めた。研究者志望。早く大学院に進めるのがプラスだった。今年3月に卒業し、修士課程に進学した。同時期に3年で卒業したバングラデシュの留学生ワリッド・カリッドさん(23)は、
「3年生が忙しかった。研究室を選んだり、研究に慣れたりするのが大変だった」
東工大では、早期卒業後、修士課程に進み、その後、他の学生と同様に就職するケースが多いという。
時間もお金も節約できて「成績優秀者」の評価もゲットできる。「コスパ」を考えれば、早期卒業しない手はない。(編集部・長倉克枝)
※AERA 2017年8月28日号