●加工・製品化までやる
スキンケア商品の製造販売会社、アビサル・ジャパン(同)社長の幟立(のぼりたて)真理さん(57)も移住者だ。
広島県呉市の出身。商品企画を手掛けた。同僚から教わったのが「お風呂に砂糖を入れると保湿効果があり、温まる」。試してみると、確かにそうだった。砂糖の効果を実感した、という。床ずれの治療薬も砂糖が主成分、と知った。
起業を模索した幟立さんは、砂糖を主原料にしたスキンケア商品の開発に取り組んだ。試行錯誤の末、同じ砂糖でも北海道で栽培されるビート(サトウダイコン)が最適と分かった。
幟立さんはビートを求めて札幌市に本社を移し、自らも移住。独自のスキンケア商品「シュクレ」の製造販売を開始。「地域でがんばる中小企業」をたたえる15年の北海道経済産業局長顕彰を受けた。北海道産食材を原料として供給するだけでなく、加工し製品化する「外貨獲得」の先駆けとなるような事例だ。幟立さんが明かす。
「北海道はブランド。良いイメージしかない。北海道には素晴らしいものが多い。もっと頑張ればいいのに」
北海道の今日を築いた先人は本州方面からの移住者だったが、明治期以降の北海道は石炭産業をはじめ原料供給基地。自ら原料を加工し付加価値をつける必要がなかった。不況対策は常に公共工事。フロンティアスピリットが薄れ、自ら苦境打開に奔走しない。「官依存」の傾向が強まった。
しかし今、新たな移住者たちが北海道の可能性を耕し始めている。
北海道弁でエールを送るとしたらこうだ。
「けっぱれ、北海道」
(ジャーナリスト・綱島洋一)
※AERA 2017年7月31日号