「生活の役に立たないことばかりして過ごしています(笑)」

 しかしその様子はなんとも楽しげ。オモテ趣味を隠れみのに、ウラ趣味の世界を思いっきり堪能している。

「趣味は何ですか?」

 就職の履歴書記入で、この問いを突きつけられる人は少なくない。「読書と書いたが実際は漫画中心」(47歳女性)、「無趣味なので、読書、音楽鑑賞、楽器演奏と書くようにしている」(46歳女性)といった声がアンケートにあった。趣味の、多少の「盛り」や「演出」はデフォルトのようだ。

「私の場合は偽装でなくて、『印象操作』です」

 そうにんまり笑うのは都内の病院で検査技師として働く女性(29)。小学生のころから20年来、ビジュアル系ロックバンドの追っかけをしている。

「履歴書には『音楽鑑賞』と書いています。いかにもクラシックを聴いていそうな雰囲気で(笑)」

●「オタク」と言わないで

 女性の悩みは無趣味ならぬ、多趣味すぎること。音楽、詩、天体観測、鉱物収集、手芸、アクセサリー作り……。

「バンドの全国ツアーのときは有休も使い、できる限り行きます。チケット代だけで10万円。地方に行く交通費や宿泊費がさらに10万円以上かかります」

 これに加えて他の趣味もあり、時間もお金も体も足りない。多趣味ゆえ不本意な勘違いをされることもある。

「『この間までバンドの追っかけをしていたのに、今度は石?その前は星だったよね』って。移り気な性格のように思われることがあるのですが、全部が現在進行形で、つながっていることをわかってほしい」

 宮沢賢治が好きで、作品世界に触れるうち文系から理系へと興味の幅は広がった。音楽も詩も鉱物も天体観測もすべて数珠つなぎだ。さらに、女性にはもうひとつ許せない言葉があるという。

「オタクなの?」

 趣味について聞かれ、話し始めると、そう線引きされることがある。

「興味を持てば詳しくなるのは当たり前。そんなこと言ったら、日本中の大学教授はオタクということになりませんか? 『簡単にオタクと言うな!』と声を大にして言いたい」

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