「趣味はお金に余裕のある人たちがするものではないですか?」
ただし人に趣味を聞かれたとき「ありません」と答えると、その場が気まずくなる。このため一応答えは用意している。
そう言うと、たいていの人は察してくれ、それ以上深く聞かれることはないという。
「おしゃれ~! これも手作り?」
「私にも今度教えて!」
子どもの学校の保護者会に行くと、趣味を持つ母親たちの周りには華やかな輪ができる。2人の子を持つメーカー勤務の女性(45)は輪のなかに入るともなく曖昧な笑みを浮かべる。無趣味なのだ。趣味を持とうとトライした時期もあったが、仕事と子育てに追われ続けられなかった。
「お休みの日、なにしてた?」
こんな話題を振られるとギクッとする。子どもの用事か家事か仕事。わざわざ話すような、スペシャルなことは何もない。
「仕事かなぁ~」
「宿題を見てたかなぁ~」
半疑問形で、語尾を上げ答える。空気を沈めないためだ。この場で期待されているのは、「アウトドア」「映画」など盛り上がれる非日常ネタなのだ。
●帰宅後が「本当の自分」
インスタグラムに子どもの写真くらいしかアップできるものがない自分と違い、趣味を持つキラキラママたちはSNSの発信も活発だ。投稿するたび「いいね!」がつき、格付けも上がっていく。
「ネタがあるから、次々と投稿できるんですよね……」(女性)
しかし一方、愛犬の活動を趣味にしている親しい友人は「いいね!」増産のためわざわざ遠方のイベントに出かける。たった1日の出来事を何回かに分けて発信するなど、SNSに奉仕する姿は見ていてしんどそうだ。女性は言う。
「趣味って何なんでしょう? 『いいね!』がつかないとダメなんでしょうか?」
アエラではアエラネットなどを通じて「趣味」についてアンケートを実施し、81人の回答を得た。「趣味がない」と答えた人は1割強で一見少数派だ。だが、そのうち3人に1人が「趣味を持たないといけないようなプレッシャーを感じることがある」と答えているのが気になる。