「ボランティアでツイートの真偽を検証する人たちがいて、明らかにデマだとわかるとすぐに収束する傾向があります。熊本地震直後の『ライオン逃げた』のツイートはこの典型。ツイートした人は一般人で攻撃対象になりにくかったことも、早期収束の一因です。逆に言うと、キクチさんは芸能人だったから攻撃しやすかったのでしょう」
デマやうわさを長引かせる要素の一つは、「明確な攻撃対象の存在」だということだ。
14年に通信教育大手ベネッセホールディングスの個人情報流出事件が大炎上したのも、大企業だったことや社長が著名だったことと無関係ではないだろう。
●「不安度」がカギになる
流出した個人情報は推定約2895万件。発覚後の記者会見で当時の原田泳幸会長兼社長が「金銭的な謝罪はしない」と表明すると、「ベネッセ」を含むツイートは急増した。1日数百件だったのが、記者会見当日は約4万件、翌日には約5万件。一時的に戻っても、被害者へのお詫びは金券500円と発表されたり、その補償が図書カードと電子マネー、自社の基金への寄付からの選択だとわかったりすると再び約1万件に。平時に戻ったのは3カ月後だった。
危機管理コンサルティング会社リスク・ヘッジの田中辰巳さんは言う。
「子どもの個人情報は、大人以上に悪用されるリスクが高い。その点を無視したことで、ネット上の処罰感情を逆なでしたのではないか」
同時期に起きたマクドナルドやペヤングの異物混入事件が激しく炎上したのも、
「ネットが普及して、個人の主張でも反応がみられるようになった。処罰感情が満たされやすいのでしょう」(田中さん)
他の要素の影響ももちろんある。だが、明確な攻撃対象がいて、人々の処罰感情がかきたてられると、激化、長期化に拍車がかかる。どうすればいいのか。
「対応は『不安度』で考えます。異物の場合、糸くずならまだしも、ゴキブリなら回収に加え原因と再発防止策の公開が必須。ペヤングは、回収と工場閉鎖で、半年後の販売再開後は品薄になりました」(同)
(ライター・越膳綾子)
※AERA 2017年7月3日号