閑散とした文の里商店街。大阪市の24区中でも高齢化率が高い阿倍野区を象徴するように、買い物客もお年寄りばかり。こうしたシャッター街は大阪市内のあちこちで見られる光景になった(編集部・大平誠)
閑散とした文の里商店街。大阪市の24区中でも高齢化率が高い阿倍野区を象徴するように、買い物客もお年寄りばかり。こうしたシャッター街は大阪市内のあちこちで見られる光景になった(編集部・大平誠)
大阪市役所の庁舎。都構想が実現すれば、新たに発足する特別区の庁舎となる(大阪市北区中之島1丁目) (c)朝日新聞社
大阪市役所の庁舎。都構想が実現すれば、新たに発足する特別区の庁舎となる(大阪市北区中之島1丁目) (c)朝日新聞社

 森友学園問題の震源地となった大阪。「改革派」なのに官邸と直結、自民党を含めた野党を抑えて舵取りを続ける「維新」は大阪に何を残し、どこに導こうとしているのか。

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「ポスター? はよ作ってや。死ぬで。」「やっと気付いた。この仕事、しんどい。」

 大阪市阿倍野区昭和町にある文の里商店街は、まさに「昭和」の商店街だ。往時の賑わいを取り戻そうと、大阪商工会議所と電通の協力で2013年、52店舗のPRポスター約200点を制作、冒頭のコピーはグランプリに輝いた、閉店挨拶を兼ねた漬物店のもの。それ以外にも甲乙つけがたい抱腹絶倒ポスターで、遠来の見物客も含めて客足は回復したが、それも一時的だった。シャッターを閉める店はさらに増え、天気のよい平日の午後でも人影は少なく、お年寄りばかりだ。景気を尋ねると商店主からはこう返ってきた。

「ご覧のとおりですわ」

 面白すぎるポスターと相まって、うら寂しさが余計に募る。同区内の目と鼻の先には、日本で最も高い地上300メートルの超高層ビル「あべのハルカス」(14年竣工)があり、対比の著しさに目眩がする。

■「自公」ならぬ「維公」 弱体化する関西創価学会

 急激な都市開発が進む市北部と異なり、閑静な住宅街と文教地区が残る人口十余万の阿倍野区は、古き良き大阪を感じさせる市南部の街。他の23区と合わせ、大阪市全体の人口は約270万人で、横浜市に次ぐ日本第2の政令市だ。職員数は3万を超えるが、その士気には陰りが見える。

「大阪市役所の組織破壊は完成して、落ち着いた感すらありますね。職員のモチベーションの低下は底をついて、幹部も含めて自分の処遇にしか関心がない。住民目線で政策立案していこうという気概も失い、リスクを徹底的に冒さないようになった。木を見て森を見ない典型になってしまいました」(大阪市元幹部)

 森とは270万市民であり、地域。木とは議会第1党の「大阪維新の会(維新)」であり、政界引退した橋下徹氏から禅譲を受けた吉村洋文市長のことを指す。人口882万人の大阪府と、その約3割を占める大阪市の間に横たわる二重行政を、大阪市を解体して東京23区のような特別区に再編することで解消する。府立大学と市立大学、府立病院と市立病院、産業振興をうたう同じようなハコモノ。維新の掲げてきた「大阪都構想」は、こうした府と市の意地の張り合いで税金を無駄遣いし、庶民を苦しめてきた二重行政解消の「特効薬」になるはずだった。しかし15年5月の住民投票で、都構想は敗れた。阿倍野区を含めた南部中心の13区では反対が上回り、新住民の多い北部との「南北差」を印象づけもした。

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