「人事面で維新の意向が強く反映されているのはもちろんですが、それ以外は役人に丸投げで情実人事が横行し、不公平感が増幅している。外郭団体への再就職は、天下り排除の観点から、採用試験を受験することが前提になっている。しかし実際は、市の人事担当幹部が年限が来た外郭団体役員の肩を叩き、退職予定職員に団体ポストを指定して受験を指示しています」(前出の大阪市元幹部)
極めつきは、昨年、人事担当だった村上龍一副市長が退任するにあたり、一般財団法人大阪市職員互助会に理事長として転出したケースだ。それまでは現職の市幹部が「当て職」として就いていたが、これを専任化して報酬を払う事実上のポスト新設だ。定款変更で理事の定数を1増し、互助会の依頼に基づいて吉村市長が村上氏を推薦して決まった。
維新に忠誠を誓った幹部にはアメを与え、改革とは程遠いお手盛りが横行しているのではないか。中央省庁との人事交流を最小限にとどめ、自前で優秀な人材を育てることなどから「中之島モンロー主義」と呼ばれた誇り高き大阪市。難関の採用試験を突破し、市民のために粉骨砕身していたはずなのに、維新という名の「改革者」に「既得権益」のレッテルを貼られ、ズタズタに切り刻まれた。筆者が会った何人もの職員や元職員が、疲れ切った表情でこうした心情を吐露した。
誰のための都構想なのか。そして、橋下前市長時代には動かなかった水道事業と地下鉄・バスの民営化にも同じことが言えまいか。水道事業については維新、公明、自民の足並みが揃わずにこの3月28日に廃案になったが、地下鉄・バス民営化は自民党の主張した大阪市が100%株式を保有するなどの案を受け入れ、可決に必要な3分の2の賛成を得て成立した。
市の関与を残すという自民のメンツを立て、政党間の欲得ずくで通した「民営化」に、市民のためにという哲学は感じない。都構想が実現したら消滅する大阪市が100%出資する「民鉄」が何を目指しているのか意味がわからない。鉄道事業にも詳しい大阪の財界関係者はこう言う。