ところが、終えたはずの大阪都構想は、当初引退を表明していた維新創設メンバーの松井一郎知事が吉村氏とともに同年11月の大阪府知事・大阪市長のダブル選挙に圧勝したことで息を吹き返した。そして、公明党の後押しで来年秋に再び住民投票が行われる公算が大きくなった。中央では「自公」政権だが、大阪では「維公」なのである。

 そもそも公明は都構想には反対の立場を表明しながら、前回15年も住民投票を容認。今回も市は存続させるが、24の行政区を合区して権限と機能を強化する「総合区」に再編するというマイナーチェンジで住民投票を容認したに過ぎない。「常勝関西」と謳われ、結束力の固さと選挙の強さを誇った支持母体の関西創価学会も様変わりしているようだ。ある創価学会関係者はこう明かす。

「公明の市議団は大阪市解体には反対しているものの、維新とは揉めないように自主規制させられている。長く関西のトップに君臨していた選挙のプロで2年前に亡くなった西口良三氏が名誉職に退いたのが09年。翌年立ち上がった維新が台頭していく過程で、選挙実務に疎いポスト西口体制は、大阪選出の国会議員に選挙対策を丸投げするようになり、どんどん弱体化していった。かつての栄光は地に落ち、今や東京の支店と化しています」

 15年のダブル選で知事、市長ともに独自候補を立てた自民は完敗し、もはや大阪では政権党としての気配も感じられなくなったいま、官邸だけでなく公明の中央本部が大阪で顔色をうかがう相手は維新なのだ。

■不公平な情実人事の横行大阪モンロー主義の終焉

 この流れが続く限り、来秋の住民投票は確定的であり、特別区設置案が勝利すれば大阪市は文字通り消滅し、いくつかの特別区に姿を変える。しかし、それがすなわち行政サービスの向上につながるのだろうか。

 橋下前市長が鳴り物入りで導入した公募区長も、セクハラやパワハラ、書類の改竄や入札業者との癒着が疑われる行為などが続出、任期中の免職や退職が相次いだ。そして特定の公募区長が市の幹部に再任用されたり、府の幹部に転出したりした。公募校長から教育委員会を経て区長に就任した女性もいる。

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