「鉄筋コンクリートのマンションは、定期的な点検やメンテナンスが適切に行われていれば100年は十分住めます。逆に、それを怠ると50年も持たない」
長嶋さんによると、マンションは新築時が最も丈夫というわけではない。鉄筋を覆っている厚さ30ミリ程度のコンクリートはもともとアルカリ性で、1年に0・5ミリずつ中性化して強度を増していく。強度がピークに達するのは50年後という。
「ただし、それを過ぎると中性化に伴い水が浸透しやすくなるのでメンテナンスが必要です。現実には、それより早い段階でコンクリートがひび割れて水が入るので、その対策を怠ると鉄筋がさびついてくる」(長嶋さん)
管理が不十分な築浅物件より、築年数が古くても必要な修繕がなされている物件のほうが、寿命も長く安心して住めるという。しかし、売りに出される中古物件の修繕計画や実績は、確認できないことも多い。
「築年数が同じなら良い物件も悪い物件も同じ価格がついているのが現状。これではロシアンルーレットと同じで、何をつかまされるかわからない」(同)
こうした事態を改善しようとする動きもある。国交省は不動産取引に必要な情報を集約・管理し、中古住宅の流通を促進する「不動産総合データベース」の構築を進めている。すでに横浜市や大阪市などで試行運用されており、18年に本格スタート予定だ。中古マンションの修繕計画や履歴、組合運営、収支会計といった情報も、確認可能になる見込みだ。
●修繕積立金をチェック
中古マンション購入は、このシステムが活用できる来年まで待つのが得策なのか。長嶋さんはそうとも言い切れないと言う。
「このシステムが活用できるようになれば、良い物件にも悪い物件にもそれに見合った価格がつくようになる。今、古くても適切に管理されている『掘り出し物』を購入できれば、将来価値が上がることが考えられます」
数多く流通する中古マンションの中から優良物件を選び出す方法として、長嶋さんはまず点検・修繕の履歴や計画を確認することを勧める。