●自分の価値はいかほど

 個人の参加登録は無料。登録すれば参加者全員の入札状況が随時、サイトで閲覧できる。個人を特定する情報は公開されないが、各社が「誰を年収いくらで指名したか」を閲覧できるため、どんなスキルや経験が評価されるのかが一目瞭然となる。

 現段階では、転職の必要に迫られていない人の登録も少なくないという。第3回入札に参加し、今年2月に自動家計簿アプリやクラウド会計ソフトの開発会社「マネーフォワード」に転職した男性(24)もその一人だ。

「自分の市場価値は今どれくらいなのか、試してみたいという気持ちが強かった。予想よりも高い評価をいただいたのでびっくりしました」

 この男性は9社から指名を受け、提示年収が100万円以上アップとなる企業も多数あった。この結果に背中を押される形で転職に踏み出したが、マネーフォワードを選んだ決め手は4人の現場リーダーたちとの面談だったという。最終的には、「報酬よりも一緒に働きたいと思えるかどうか」を重視したという男性はこう振り返る。

「採用する側、される側双方の期待値にズレがあると、転職後のミスマッチにつながると思います。面談では自分を良く見せることよりも、相手を知ること、自分を知ってもらうことに集中するほうが良いのでは」

 転職ドラフトのサービスの肝は、採用後の年収がドラフトで提示した年収の90%を下回ることを企業側に禁じる「90%ルール」だ。それでも、内定後の賃金トラブルが過去に発生した。

 昨年9月、中途採用が内定したITエンジニアの男性が、内定後に提示された年収額が入札指名時の金額と大きく食い違うとして、転職を辞退するケースが発覚した。この男性のブログによると、ドラフトでの指名額は550万円。しかし、実際に提示されたのは428万円余りだった。人事担当者からは、この金額にみなし残業代25時間分がつくため実際には491万円余りに、月45時間残業すれば541万円余りになる、と説明されたという。

●採用にだましのテク

「ルール違反ではないか」との男性の問い合わせに対し、リブセンスは当該企業への確認とともに、ルール改善も進めた。
「指名時点で固定残業代および賞与の有無を明記する」ことを定め、提示年収は「内定時に無条件で支給確約できる金額に限る(残業をした場合に支払われる残業代は、提示年収に含めることができない)」とする項目を加えた。

 転職市場が活況を呈する中、求人情報の透明化は業種や経営規模の大小を問わず、改善が求められている。

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