捜査機関は個々の裁判官の判断傾向も事前に把握しています。全国には多くの裁判官がいて、非常に厳格に吟味する人もいれば、捜査官の主張通りにどんどん令状を出す人もいる。大都市圏では「夜間令状」という深夜の令状発布は、民事も含めた全裁判官の当番制です。中小の裁判所は令状部があるわけではないので、日中の令状発布も当番制だったりします。その日の当番が厳格な裁判官だと事前にわかると、捜査機関は令状請求をしません。簡単に令状を出してくれる裁判官が当番の日まで待ってから申請するのです。捜索差し押さえ令状などについては、そういう措置も優に可能です。私が勤務したある地裁では、そういうことが日常茶飯事的に行われていました。

 沖縄の東村高江周辺のヘリパッド建設に反対する住民たちへの逮捕に対して、司法は歯止めになりましたか。各地で起こっている反原発訴訟に対してどういう判決が下されていますか。それを考えれば、明白です。裁判所は、権力に「なびきやすい」と知るべきです。誠に残念なことですが、間違っても「裁判所があるから大丈夫」などと、安心してはいけません。(編集部・作田裕史)

AERA 2017年5月1-8日合併号