「自分の体力の限界のものをやっている」
と話したこともある。
●5回に4回は高得点
難しい4回転ジャンプを4本、しかも後半にも跳ぶ。そのために犠牲にしたものがある。それは、アイスダンス選手のようにエッジを深く倒し、一蹴りでぐんとスピードに乗っていく滑りだ。2月の四大陸選手権のフリーも、後半のジャンプのために滑りの力強さを犠牲にした。
仮に五輪のSPで出遅れた場合に、逆転で金メダルを取りにいく構成をカードとして持っていてもいい。ただ、スピードや、エッジを倒す滑りの質などを高め、5回滑ったら4回は高得点が出るようなプログラムを作り上げたい。五輪連覇の確率を高めるためのそんな現実策を、羽生も考え始めている。
羽生の五輪連覇を阻む最大の敵をあえて挙げるとすれば、それはケガだろう。
2シーズン前の14年11月、羽生はグランプリ(GP)シリーズ中国杯の練習で他の選手と衝突し、リンク上に倒れた。同じ年の全日本選手権では腹部の痛みに見舞われ、その後手術。練習再開後も右足首を捻挫し、さらに股関節も痛めたという。15年3月に行われた世界選手権ではSPで首位に立ったが、フリー冒頭の4回転サルコーが2回転になるなど、ミスが続いて逆転を許した。
昨シーズンは足の痛みに苦しんだ。16年3月から4月にかけて行われた世界選手権では、SPで首位に立ちながら、やはり2位。フリーの4回転サルコーで転倒などのミスが重なった。左足甲の靱帯を損傷していた。
今季は、その左足甲のケガで2カ月出遅れたが、慎重に練習し、むしろシーズン後半に体の状態を整えられた。
五輪本番のリンクに上がったときに、「心」を最高の状態に整えることも大切だ。
今季の出場はここまで6試合。そのうちノーミスの演技は世界選手権のフリーだけだ。大きな失敗をしなかったGPファイナルのSPは、着氷が乱れた4回転ループの出来栄え点(GOE)がマイナス1.03点だった。
羽生は自身をこう分析する。