「ノーミスを多発する選手ではない。今シーズンを通して、やっぱり弱いなって思う部分が多くあった。もうちょっと何か、核心的なものをつかみ取りたい」
難しいジャンプを組み込んだ攻めのプログラムだから、ノーミスの確率が低くなるのは仕方がない面もある。しかし、練習ではできていた。その割に、試合では安定感がなかった。
●自然の中に入り込んだ
一方で、収穫もある。難しい挑戦を続けたことで「心の整え方」ではヒントを得た。
「無理やり(集中状態に)入れるか、入るか、という違いがあると思う。集中状態に入ろう入ろうという意思があって集中していくのか、無意識に『あ、これ集中だったんだ』みたいな状態に入るかって、たぶんある。無意識に入っていた状態が世界選手権。それと、四大陸のフリー」
世界選手権フリーの直後、
「風だったり、川の中にドプンと入っているような感覚。そういった、何か自然の中に入り込んでいるような感覚があった。すごくいい集中状態だった」
と語った。平昌五輪でもそんな精神状態を作り出せるか。再現方法を確立しようとしている。
気になるのはプログラムだ。
SPは、今シーズンと同じものを使うことも考えられる。プリンスの「Let’s go crazy」は観客の反応も良く、独特の空間を作り出せる。羽生も、
「生まれてから、もしくはスケートを始めてから、こんなにオーディエンスとコネクトできたことはなかった。このプログラムはライブのよう」
と心地よさを口にする。滑り慣れているSPをキープすれば、ある程度フリーや他のことに時間を割ける利点がある。飽きられる欠点もあるが、今季は一度もできなかったノーミスの演技をすれば、逆に大いに盛り上がる可能性が高い。
フリーは変更が濃厚だ。今季、世界選手権前のフリーのベストは、四大陸の206.67点。世界選手権の223.20点よりかなり低い。
「プログラムが評価されにくくて、自分自身もなかなか表現しきれなくて」
と羽生。来季は、たとえジャンプが全て決まらなくても盛り上がる選曲をしてくるだろう。