フィンランド・ヘルシンキで開かれた2016-17年シーズンの世界選手権は、羽生結弦の大逆転で幕を閉じた。羽生は世界王者として平昌五輪のリンクに立つことになる。
羽生結弦(22)は既に、五輪連覇への戦略を練り始めていた。ショートプログラム(SP)5位からの大逆転劇で、3大会ぶり2度目の世界王者となった翌日のことだ。
来年の平昌五輪、金メダルへのカギは三つある。ジャンプかバランスか。体と心が合うのか。そして、どんな曲を選択するのか──。
難しいジャンプに価値を見いだしてきた羽生が、世界選手権後、「気になった」として名前を挙げたのは意外な選手だった。米国のジェーソン・ブラウン(22)。SPで4回転ジャンプは跳ばない。フリーで1本だけ入れていた4回転のトーループでは転んだ。それでも、7位に食い込んだ。羽生は、フリーで自身の持つ世界最高得点を塗り替える223.20点をたたき出し、逆転優勝を果たした翌4月2日にこう語った。
「ジェーソン選手が、4回転は失敗したけどすごくいい点を出した。4回転を多く跳んで、いかにきれいに決めるかという風潮になっていたが、新たに考えなきゃいけない大会になったと思っている。自分も武器が何かを振り返って、また来シーズンのプログラムを作りたい。4回転と演技のバランスというものを、すごく考えなきゃいけないと感じました」
そして、こう続けた。
「最終的にどちらかのプログラムがクリーンじゃないと、圧倒的な点数は出ない。『とにかくオリンピックで金メダルを取りたい』と、今シーズンはずっと思っていました。どんな隙もつくらないスケートを作り上げないといけないな、と感じました」
フリー直後に、
「アクセル-トーループが終わったとき、5個目(の4回転)をやろうかなと思った」
と語ったのとは逆の意識だ。
世界選手権のフリーを、
「スピードはもっと出せたかもしれないですけど、これが自分のジャンプのため、演技のため、このプログラムのすべての完成度のためにできる、一番いいパターンだった」
と分析した。