東京外国語大学教授・伊勢崎賢治さん(59)。「海外派遣が増えた自衛隊のため、日本が各国と結ぶ地位協定にも注目すべきだ」と唱える(撮影/朝日新聞専門記者・藤田直央)
東京外国語大学教授・伊勢崎賢治さん(59)。「海外派遣が増えた自衛隊のため、日本が各国と結ぶ地位協定にも注目すべきだ」と唱える(撮影/朝日新聞専門記者・藤田直央)
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 悩める「世界の警察官」アメリカ。海外展開する米軍を守る地位協定の締結先は日本など100カ国超にのぼる。厳しさを増す交渉に、トランプ政権も苦悶しそうだ。2015年に作成された米政府内の報告書「米国の地位協定交渉への挑戦と戦略」をどう読むのか。

 東京外国語大学の伊勢崎賢治教授(59)もこの報告書に注目している。国連PKOや日本政府の代表として紛争の地で平和構築に関わってきた「紛争解決請負人」。最近は世界各地に派遣される米軍のための地位協定に関心を強める。在日米軍との比較をふまえて聞いた。

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 米国がテロとの戦いで軍を送ったアフガニスタンで、文民として軍閥の武装解除を担当しました。そのアフガンで米軍駐留延長のため2014年にできた協定で、裁判権をどうするかが大問題になりました。以来、日本を含む各国での米軍の地位協定を調べています。

 この報告書によく表れていますが、米軍は世界でドタバタです。特にテロとの戦いでは住民を巻き添えにして反米感情が高まり、それが新たなテロを生む。日韓や欧州といった大規模な駐留先では事件・事故が続く。米軍を外国に置くハードルがどんどん上がっている。

●外務省の説明おかしい

 だから提言では地位協定の交渉に柔軟さを求めています。さらに言えば、住民感情に配慮するなら、協定を改善したことを改定で示すのがわかりやすい。日本のように運用の改善を重ねても効果的ではありません。

 沖縄県うるま市で昨年起きた殺人・強姦致死事件で問題になりましたが、米軍と契約する企業が雇う人を米国の裁判権でどこまで守るかについて、「ケース・バイ・ケース」という提言も興味深い。米軍が監督できないので、軍人や軍が雇う軍属並みには原則扱えないが、軍と一体で行動する契約企業が雇う人は保護に値するとしています。

 日本では米国の裁判権が優先する軍属との境界があいまいです。昨年の事件を機にようやく補足協定ができましたが、結局、「米政府の招請」などの条件を満たせば軍属とみなすという運用に委ねられました。ちなみにアフガンは14年の協定で米軍契約企業が雇う人について自国の裁判権を確保しました。

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