「各自治体との連携や、地元の観光需要を掘り起こす動きが全社的にならなかった」

 足元の安全確保や需要喚起といった動きが鈍いまま、低金利時代が襲ってきた。もともと経営難が予測されてきた3島会社は分割民営化時に国から「経営安定基金」(JR北は6822億円)を与えられ、その運用益で赤字を埋める仕組みだった。だが、低金利時代に突入して運用益は目減り。当初の金利水準に比べ、トータルで約4千億円減少したと推測されている。かといって、取り崩しもできない。

 曽根氏は、同じ苦境に立たされた四国と北海道の違いがここで表れたと言う。四国は苦しい状況でも路盤改修に積極的に投資し、枕木をコンクリート製に切り替えて結果的に保守費を切り下げることに成功した。JR北は、その動きができなかった。

「四国、九州と違い鉄道システム全体が見通せる技術者が会社のトップにつかなかったため、技術革新の姿勢が次第に失われたのです」(曽根氏)

●国の支援体制が不十分

 この苦境を招いたことをJR北だけの責任にするのは間違いだ。鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは、「国がJR北海道を支援する仕組みが整っていないのが最大の問題」と指摘する。

 JR北は民営化当時に比べて赤字線区を切り、利用客も増えている。だが運賃値上げをしたくても、国の指針により他のJR旅客会社とコストを比較して運賃を決める「ヤードスティック方式」を採用しているため自由に運賃が値上げできない。そのため正社員数を発足当時の1万3千人から7千人(16年)まで減らすなど、コストカットを強力に進めざるを得なかった。一連の事故もその流れの中にあると梅原さんは指摘する。

 北海道内を走るJR貨物から十分な収益を得られなかったことも、JR北にはダメージだった。JR貨物も経営環境が厳しく、貨物列車が走ることによるレール摩耗分などの上乗せ経費分だけの「アボイダブルコスト」のみを払う仕組みになっている。北海道大学の石井吉春特任教授(社会政策)は、「北海道内では旅客に対する貨物の割合が極めて高く、本来JR貨物が払うべき費用負担をJR北が肩代わりしているため赤字解消が進まない」と分析する。石井特任教授は、JR北海道が貨物から得られていない線路使用料は年150億~200億円程度と推測する。経営安定基金の運用益の大半を食いつぶす計算だ。

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