もう一つの方策は、北海道新幹線の高速運転化だ。現在、整備新幹線部分の最高時速は法律で最高260キロと決められている。法律を変え360キロ運転を実現すれば30年度に札幌まで延伸予定の北海道新幹線は東京─札幌間が4時間を切る可能性があり、「航空機との競争で優位に立てる」(鎌倉さん)

 もっとも、老朽化した鉄路の改修や整備点検はこれからもJR北の経営を圧迫し続ける。宇都宮教授はJR北が主張する通り、インフラ部分を国や自治体が保有する「上下分離方式」が望ましいと主張する。

「本来、鉄道は道路同様、社会インフラとして国や自治体が地域全体の社会的な利益を考え、その土台を支えるべきもの。欧州で浸透しているこの考え方を、JR北海道の問題を機に日本でも広げていくべきです」

 JR北の経営好転の切り札になるかもしれない新幹線。そんな新幹線を渇望しているのが、四国だ。新幹線誘致の旗振りを務める「四国の鉄道高速化連絡会」は誘致の理由について、「人口減少対策のための基盤として、全国の新幹線ネットワークと結ぶことが不可欠」と説明する。一方、整備新幹線を地元にもつ青森大学の櫛引素夫教授(地理学、新幹線論)は、こう警鐘を鳴らすのだ。

「青森では在来線沿線の三沢市や野辺地町などが特急停車駅でなくなり、新幹線ができて利便性が低下して不満が根強く残りました。誰が得をし、誰が損をするかを検討しないまま建設促進論だけが強調されれば、地域に混乱を招く可能性もあります」

(編集部・福井洋平)

AERA 2017年4月10日号

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