東日本大震災、そして福島第一原発の事故から6年。熊本地震からも、まもなく1年がたとうとしている。いずれの地でも復興は道半ばで、いまも多くの人々が不自由な暮らしを強いられている。しかしその現実の一方で、「風化」は確実に進んでいる。4大都市圏のハザードマップと不動産の値動きを重ねあわせると、「人気の街」の災害危険度がはっきりとあぶり出された。帰宅困難者対策には「東高西低」の傾向が見て取れた。AERA3月13日号は、6年後のいまだからわかったことも含め、「震災時代」を生きるために知っておくべきことを特集。
地震や建築の専門家はどんな家に住み、震災対策を実践しているのか。読者に役立つヒントをいろいろ教えてもらった。
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東京・目白の高台に、一軒の家がある。一見何の変哲もない住宅だが、実は大きな災害が起きたとしても、「逃げる必要のない家」だ。
「地震などの災害時に、家の中にいるのが一番安全、というコンセプトで建てました」
そう胸を張るのは、この家を2014年に建てた工学院大学都市減災研究センター長の久田嘉章教授だ。
「災害に強い家は、『建物対策』『室内対策』『備蓄』の三つが重要です」
と久田教授は強調する。これらすべてを兼ね備えるのが、久田教授の自宅である「逃げる必要のない家」なのだ。
まず「建物対策」から見ていこう。家を建てると決めた13年、久田教授はまずハザードマップで震災や水害の危険度を調べ、自宅を建てる場所に目白を選んだ。その上で、建設予定地の地盤調査で地盤が良いことを確認した。
●家にとどまる工夫を
家の耐震性にもこだわった。基礎部分を、高密度な配筋による「べた基礎」にするなどして、建築基準法が定める耐震強度の1.5倍である「耐震等級3」を実現した。耐震性を上げるとコストアップが懸念されるが、
「建設コストは通常の水準よりも約5%上がるだけです。家具や内装のデザインにお金をかけるよりも、安全の上でも、家に長く住み続ける上でもよいのではないでしょうか」(久田教授)