「人気の秘訣は、タモリさん独自の『視点』ではないかと思います。私たちの暮らしの中にある何げない『坂』や『道』といった景色。普段生活している時には、気に留めることはほとんどありませんが、なぜ坂ができたのか、どうして道が曲がっているのか。タモリさんが注目し、あえて疑問を持って地形を見ることで、全く新しい土地の歴史が見え、その歴史が今につながっていることがわかります」

●ブラタモリがブーム

 昨年7月から刊行されている書籍版『ブラタモリ』シリーズ(KADOKAWA)も好調で、全6巻で55万部売れている。同社の文芸・ノンフィクション局第4編集部角川新書編集長の原孝寿さんは「異例の売れ行き」と話す。

「テレビがあっての書籍の売れ行きだと思いますが、幅広い年齢層に売れています」

 デジタル時代を反映してか、スマートフォン向け古地図アプリも人気を集めている。

「こちずぶらり」は東京、京都、鎌倉など日本各地と、ニューヨーク、ローマ、パリなど世界の30都市近くの古地図が見られる、無料のアプリだ。開発したのはITベンチャーの「Stroly(ストローリー)」(京都府精華町)で、古地図好きの若手社員たちが作った。開発した理由について高橋真知社長は、

「古地図をスマホで持って歩けると、面白いと思いました」

 古地図は資料館や公文書館などのデジタルアーカイブとしてネット上で閲覧することができるが、気軽に持ち歩けない。持ち歩くことができれば、町歩きが楽しくなると考えた。

 全地球測位システム(GPS)を使用し、古地図上に現在位置を表示する。移動するとまるで古地図上を歩いている気分に。江戸時代だけでなく明治、大正、昭和などの古地図もアップされているので、歩きながら色々な時代を行ったり来たり。さらにボタン一つで、現在の地図に切り替わる。10年に配信を開始し、これまで10万件以上ダウンロードがあったという。

●地図はタイムカプセル

 古地図は、その時代を映す鏡だ。例えば、奈良時代の僧・行基が作ったとされる日本列島を描いた最古の地図「行基図」には、北海道は入っていない。北海道は当時、未知なる異国だった。やがて江戸時代になると、伊能忠敬が正確な日本地図を完成させる。

 また東日本大震災を機に、古地図は、液状化の可能性をチェックする記録物として重視されるようになった。埋め立て前の河道や潟、沼を確認できるからだ。

 情報の記録として作り出された地図は、歴史を伝えるタイムカプセルでもある。

 昨年7月、1枚の古地図が大きな話題となった。

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