銅刻 日本六十六州図オランダ・ユトレヒトの東洋学者、ハドリアン・レランド(1676~1718)が描いた日本地図。城下町が描かれ、交易窓口の長崎の地図もある。1720年ごろの作(写真:国土地理院提供<www.gsi.go.jp>)
銅刻 日本六十六州図
オランダ・ユトレヒトの東洋学者、ハドリアン・レランド(1676~1718)が描いた日本地図。城下町が描かれ、交易窓口の長崎の地図もある。1720年ごろの作(写真:国土地理院提供<www.gsi.go.jp>)
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築地八町堀 日本橋南絵図 全江戸切絵図は、錦絵双紙商の尾張屋清七などが版元となり、嘉永元(1848)年から慶応元(1865)年に黄金期を築いた。作者は景山致恭。築地本願寺、佃島が見える(写真:国土地理院提供<www.gsi.go.jp>)
築地八町堀 日本橋南絵図 全
江戸切絵図は、錦絵双紙商の尾張屋清七などが版元となり、嘉永元(1848)年から慶応元(1865)年に黄金期を築いた。作者は景山致恭。築地本願寺、佃島が見える(写真:国土地理院提供<www.gsi.go.jp>)
「大坂 真田丸」松江歴史館で昨年2月に発見された「真田丸」。謎に包まれていた「真田丸」の規模などを推定できる貴重な発見となった。北が下になっている。普段は、同歴史館に保管されている(写真:松江歴史館提供)
「大坂 真田丸」
松江歴史館で昨年2月に発見された「真田丸」。謎に包まれていた「真田丸」の規模などを推定できる貴重な発見となった。北が下になっている。普段は、同歴史館に保管されている(写真:松江歴史館提供)
京都のITベンチャー「Stroly」が提供するアプリ「こちずぶらり」。世界各地の古地図を、現在地情報付きで見ることが可能(写真:Stroly提供)
京都のITベンチャー「Stroly」が提供するアプリ「こちずぶらり」。世界各地の古地図を、現在地情報付きで見ることが可能(写真:Stroly提供)

 トランプ米大統領の登場で先が読めなくなってきた国際情勢。だからこそ、見えにくい事実をあぶり出す新しい地図に注目したい。VR(バーチャルリアリティー)やスマホアプリで地図の世界もどんどん進化している。ブラタモリなど街歩きブームの極意もルポする。AERA 2月20日号では「地図であぶり出す未来」を大特集。

 いま、古地図がおもしろい。きっかけは、あのタモリさんの番組だ。なぜ一枚の古い地図に私たちはここまで魅せられるのか。不思議な魅力を持つ、古地図の世界へ、ようこそ。

*  *  *

 1月下旬のよく晴れた日曜日の朝。東京都中央区八丁堀に軽装の男女の一群がいた。向かうは与力・同心組屋敷跡だ。そこから浅野内匠頭邸跡、慶應義塾発祥の地などを経て、築地本願寺へ──。江戸時代の古地図を手に、専門の歴史ガイドと一緒に「江戸」を散策する20人近いグループだった。

「忠臣蔵の赤穂浪士たちは、この道を通ったんですよ」

「へぇ~。今歩いている場所がどういう場所だったかわかるとおもしろいわね」

●古地図を手に町歩き

 ガイドの説明に参加者からそんな声が上がる。一行は築地場外市場で昼食をとり、午後は歌舞伎座まで歩いて、解散した。

 この「江戸ぶらり古地図ウォーキング」を主催したのは、旅行会社の阪急交通社。昨年9月から「江戸」を巡る全10コースを開始すると、予想を超える1万人超の申し込みがあった。

 全コースを予約したという、東京都内に住む会社員の戸田里都子さん(53)は楽しそうに話す。

「古地図って、見ていると当時の建物や生活が浮かんできます。歩いている人が、江戸時代の人のように見えてくることもあるんです」

 町のざわめきや、町人の息遣いまで聞こえてくる古地図の魅力。阪急交通社によれば、1月下旬にスタートした「江戸ぶらり古地図ウォーキング」第2弾も好評で、今は京都と山口でも古地図ウォーキングを開催。3月には名古屋、福岡、水戸でもスタートするという。

 古地図がブームだ。大型書店には古地図コーナーが設けられ、こうした町歩きが人気を呼んでいる。ブームの火付け役といわれるのが、NHK総合の「ブラタモリ」(毎週土曜・午後7時30分~8時15分)。放送を開始した2008年ごろは定期放送ではなかった。タモリさんが江戸や明治期の古地図を手にその町の歴史的な痕跡を巡り、「タモリ目線」で町を案内。番組は、台本はあるがタモリさんには見せず、打ち合わせもしない。

「ブラタモリ」のチーフプロデューサー、中村貴志さんはブラタモリ人気をこう見る。

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