トランプ米大統領の登場で先が読めなくなってきた国際情勢。だからこそ、見えにくい事実をあぶり出す新しい地図に注目したい。AERA 2月20日号では「地図であぶり出す未来」を大特集。インターネットに公開されている、ある学者が作成した地図を紹介する。
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インターネットで偽のニュースが世界中を駆け回り、極論や虚偽で真実を封殺するオルタナ・ファクト(もう一つの事実)が跋扈(ばっこ)する。うそを戦略的に使う大統領が米国に誕生した時代だからこそ、「真実の発信」にこだわるドイツ人地理学者がいる。ベンジャミン・ヘニッグ博士(38)。アイスランド大学で准教授として地理学を教える研究者だ。
本誌はユニークな地図を作製する研究者をインターネットで検索し、ヘニッグ氏にたどりついた。
「世界に急速に広がる不透明感や漠然とした不安を払拭するためにも、オルタナ・ファクトではない真実のやりとりが重要になる。そのためのツールとしてカルトグラムが有効です」
●ふくらみで立体感出す
カルトグラムとは統計地図のことで、学生時代から活用してきたという。調べたいテーマのデータを集め、その数値の大小に応じて各国・地域の面積の比率を変化させる「面積統計地図」がお気に入りだ。
なかでも「等人口統計地図」を活用するのがうまい。人口比率で面積を変えて世界地図を作るのだが、実際の国の形や位置はなるべく維持するため、平面的に面積が拡大、縮小するのではなく、面積がふくらんだり、ゆがんだりする。この立体感により、人口規模の違いを視覚的に実感しやすくなる。細かいマス目(グリッド)を地図上に作り、その一つ一つの大きさを調整することで立体感を出すのだ。この上に、例えば感染症や地震の発生率といったデータを色分けして重ね合わせるのが、ヘニッグ氏の手法の最大の特徴だ。地域的な発生率の広がりに加え、人口の密集度との相関関係も同時に分析できる。
地図は、65歳以上の人口比率(2012年)を欧州の人口カルトグラムに重ね合わせたもの。青色が濃いほど高齢化率が高いことを示す。