●熱量をキープできた

 弭間はキャスティングや音楽、舞台設定の議論にも参加。ヒロインがご飯をかみ吐き出して作る「口噛(か)み酒」については正直に、「気持ち悪い」と意見した。

「古風な面が強く出ると若い人が見に行かない。宣伝的には出さないようにしました」(弭間)

 ずっとそばで見ていたことで、

「制作者の意図と思いがわかった。その気持ちが宣伝に乗って熱量をキープできた」(同)

 宣伝は、15年12月の公開特報と16年4月の劇場予告のテイストを変えたことで山場を迎える。前者には後ろ姿しか登場しないキャラクターが、後者ではRADWIMPS(ラッドウィンプス)の曲にあわせて派手に動く。映画「名探偵コナン」と共に公開すると、ツイッターの書き込みがはね上がった。7~8月の試写会では約4万人に無料で見せた。弭間は言う。

「監督には『こんなに見せたら劇場に来ない』と言われましたが、口コミで評判が広がった。作品のストーリー性とポテンシャルがみんなを動かしたんです」

 作品には力があった。新海も、

「震災を経て、日常の風景はいつでも失われうるというのが私たちのリアリティーになった。だから諦観めいた態度よりも、その中でがむしゃらに『生』に手を伸ばしてもがくような作品を作りたいと考えました。それが観客の心に響いた。1年後でも1年前でも、ここまでのヒットはなかったかもしれません」

 と分析する。言えるのは、300館の決断なくして200億円超はなかったということだ。(編集部・福井洋平、柳堀栄子、竹下郁子)

■日本映画 興収ランキング
1位 2001年<アニメ>「千と千尋の神隠し」/308億円/ジブリ
2位 2016年<アニメ>「君の名は。」/209億円
3位 2004年<アニメ>「ハウルの動く城」/196億円/ジブリ
4位 1997年<アニメ>「もののけ姫」/193億円/ジブリ
5位 2003年<実写>「踊る大捜査線THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」/173.5億円/フジテレビ
6位 2008年<アニメ>「崖の上のポニョ」/155億円/ジブリ
7位 2013年<アニメ>「風立ちぬ」/120.2億円/ジブリ
8位 1983年<実写>「南極物語」/110億円/フジテレビ
9位 1998年<実写>「踊る大捜査線THE MOVIE」/101億円/フジテレビ
10位 1986年<実写>「子物語」/98億円/フジテレビ
11位 2010年<アニメ>「借りぐらしのアリエッティ」/92.5億円/ジブリ
12位 1990年<実写>「天と地と※」/92億円
13位 2013年<実写>「永遠の0」/87.6億円
14位 2009年<実写>「ROOKIES-卒業-」/85.5億円/TBS
15位 2004年<実写>「世界の中心で、愛をさけぶ」/85億円
16位 2014年<アニメ>「STAND BY ME ドラえもん」/83.8億円
17位 1988年<実写>「敦煌」/82億円
18位 2007年<実写>「HERO」/81.5億円/フジテレビ
19位 2016年<実写>「シン・ゴジラ」/81.1億円
20位 2010年<実写>「THE LAST MESSAGE 海猿」/80.4億円/フジテレビ

◎興行通信社調べ。2016年12月18日現在。※の配給は東映。それ以外は全て東宝(共同配給含む)。

AERA 2017年1月2-9日合併号

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