円高ドル安が進んで、ドル換算での駐留経費の負担がさらに増す中、日本政府は米側の要求に応じ、78年度から在日米軍の日本人従業員の労務費の一部負担(62億円)を始める。これがアリの一穴になり、翌79年度からは基地内の隊舎や住宅の建設(提供施設の整備費)なども加わった。

●負担増へ特別協定まで

 これらについて日本政府は「地位協定の範囲内の負担」との解釈でしのいだが、長続きはしなかった。87年度に日本人従業員への労務費分担を大幅拡大するのに伴い、日本政府は米側と「特別協定」を締結する。

「特別協定は、地位協定24条の範囲を超える経費負担を求める米国の要求に応えるため、締結を余儀なくされたものです」
 基地財政に詳しい京都府立大学の川瀬光義教授(経済学)はこう解説する。

 その後、特別協定を締結更新するたび日本の負担はズルズル膨張。91年度からは日本人従業員の基本給と米軍施設内の光熱水料、96年度からは訓練移転費も日本側負担になった。

「政府は国会審議で、『暫定的』『特例的』『限定的』であることを強調しましたが、特別協定は延長を繰り返し、事実上恒常化しました」(川瀬教授)

 防衛省が「在日米軍駐留経費負担」(思いやり予算)とする2016年度予算1920億円のうち、特別協定による支出は1450億円と約4分の3を占める。

 だが、実質的な在日米軍駐留経費に関する支出はこの額に収まらない。

 防衛省は主に在日米軍基地の統合・再編にかかわるSACO関係経費と米軍再編関係経費を「思いやり予算」とは区別している。だが、川瀬教授はこれらの経費は主として「提供施設の整備」に充てられており、「広義の思いやり予算」だと唱える。ちなみに米軍再編関係経費は、名護市辺野古の普天間飛行場代替施設の建設費など国内の米軍施設にとどまらず、沖縄の米海兵隊のグアム移転費用も含まれる。

 ほかにも、米軍基地が集中する沖縄には特別な振興予算が投下されてきた。沖縄の米軍基地所在市町村を対象に「基地の存在による閉塞感を緩和するため」の事業費として、内閣府は97~13年度、「沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業」(計888億円)を支出。これは、95年に沖縄県で米兵による少女暴行事件が起きたことで、沖縄県民の反発が高まり、米軍基地の安定維持に危機感を抱いた日本政府が講じた施策だ。

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