在日米軍の駐留経費を肩代わりしてきた日本政府の「思いやり」。来年、トランプ米大統領が誕生したら、さらなる膨張を遂げるのだろうか。
「米軍から見れば日本は天国なんですよ」
11月20日、東京工業大学で開かれたドキュメンタリー映画「ザ・思いやり」の上映会に出席したリラン・バクレー監督は、流暢(りゅうちょう)な日本語で訴えた。
●基地の外でも思いやり
神奈川県の厚木基地近くに住むバクレー監督。イラク戦争をきっかけに米軍の海外展開に疑問を抱き、3年がかりで在日米軍の内実を調べた。特に奇異に感じたのは、日本政府の「思いやり予算」を始めとする在日米軍駐留経費の肩代わりだ。
「ザ・思いやり」は、バクレー監督が神奈川や沖縄を訪ね、米軍基地内の軍事施設だけでなく、ゴルフ場や学校、住宅などの整備も日本側が負担している実態を報告。日本政府の「思いやり」が基地の外に及ぶことも指摘する。例えば、神奈川県逗子市の米軍住宅に隣接する京浜急行電鉄神武寺駅には米軍専用改札口があり、これも日本政府が整備費を負担した。
「日本政府の『思いやり』は、探せば探すほどたくさん見つけることができます」
映画の中でバクレー監督は、このままでいいの?という表情で何度も語りかける。問われているのは観客の日本人だ。
昨年夏以降、全国300カ所以上のほか、ニューヨークでも上映した。バクレー監督は映画の反響に手応えを感じている一方、日本政府の「思いやり」の停止も、在日米軍の撤退も容易ではない、と認識している。理由はこうだ。
「米軍が日本に駐留しているのは、米国の軍需産業発展のためです。トランプ氏も大統領就任までにそのことを悟り、安上がりな在日米軍基地の維持に専心するでしょう」
「思いやり予算」とは何か。あらためて経緯を振り返ろう。
在日米軍の駐留経費に関しては、用地などの提供とその所有者・提供者に対する補償は日本側、基地を維持していくために必要なその他の経費を米側負担とすることが、日米地位協定24条で規定されている。この基本原則が崩れるのは1970年代に入ってからだ。