大学が、世間と隔離された「象牙の塔」と言われたのはまさに「今は昔」。国からの補助金も削られ、若年人口も減少する中、自ら「稼ぐ」ことなしに生き残りを図れない傾向が強まっている。働く環境の悪化に苦しむ教職員。経営難の地方私大の中には「ウルトラC」の離れ業で大逆転を狙うところも出てきた。そんな大学の最新事情を12月19日号のAERAが「大学とカネ」という切り口で特集。いったいどんな対策をとれば、学生は集まってくるのか。今回は、人気ランキングでも上位に入る今注目の金沢工業大学の取り組みについて紹介する。
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地方にあり、偏差値が特別高いわけでも、学生数が多いわけでもない。そんな大学が全国の注目を集めている。金沢工業大学だ。小社刊「大学ランキング2017」では、学長からの評価で、教育面での制度や成果への注目度が国際教養大学に続き全国2位、総合でも京都大学に続き全国2位だ。方針はぶれない。
「金沢に日本のMIT(マサチューセッツ工科大学)をつくる」
だから、徹底して学生の学びの環境をサポートする。
「多くの学生は学びの楽しさを知らない。きっかけがあれば熱中し、力をつけていきます」
と、黒田壽二学園長は言う。
●「夢考房」でものづくり
校舎のあちこちに机と椅子が置かれ、学生が集う。自習室は24時間、学生に開放している。ものづくりを学べる工場「夢考房」もある。無償で個別指導を受けられる数理科目の教育研究センターを設け、昨年は延べ2万4847人の学生が利用した。
情報フロンティア学部3年の大泉千日木さん(21)は、社会に役立つ心理学や人間工学を学びたいと、金沢工大を受験した。
「5、6人のチームで課題にあたりますが、2年生までは時間配分が難しく、先生に質問できなかったり自習室で徹夜したり、苦労しました。今はいつまでに何をすべきか、整理して進められるようになりました」
夏休みに参加した企業のインターンシップでは、発言を褒められ、自分の成長を実感できた。