わが子がお世話になっている子どもホスピスも5月、5キロのチャリティーランを催した。赤、青、黄などカラーパウダー(食品製)をかけられ、全身、文字通り色とりどりになって走る参加者はみな笑顔でゴール。「世界でもっともハッピーな5キロ走」と言われるイベントの参加費がホスピスの運営資金になるのだ。

 ほかにも、元スポーツ選手と一緒に会食したり、地元のレストランにジャズバンドを招いたりと、たくさんの面白そうなイベントが各地域で、毎月次々と催される。

 現在、英国で子どもホスピス運営に対する政府の援助は全体の4%にすぎない。子どもに限らず大人のホスピス、認知症の人々の介護団体などに、19万ものチャリティー団体が支援の手を差し伸べている。

 子どもたちも、小学校のころからチャリティーについて学び、大人たちが無理なく、楽しそうに参加している姿を見ながら成長していく。これらがチャリティー文化の土壌を育んでいるのだ。

●始まったばかりの日本

 日本でも現在、難病で命の危機にある子どもたちが2万人いる。英国の子どもホスピスでボランティアをしていた喜谷昌代さんが、10年もの間、その重要性を語ってきたこともあり、4年前に日本初の子どもホスピスが、大阪市の淀川キリスト教病院に誕生。今春には東京都世田谷区に国立もみじの家が、大阪市にはユニクロと日本財団が支援するTSURUMIこどもホスピスがそれぞれオープンしたが、まだまだ数は足りないだろう。

 英国では街のあちこちやテレビで、障害がある人を見かける。私も息子を連れ、カフェや美術館などに出かけるが、わざわざ手を貸してくれたり、笑顔で声をかけてくれたりする人たちもいて、ありがたいなあと思う。

 最近では、誰もが知っている大手スーパーが、胃ろうで栄養を取っている子どもたち用の洋服を売り出して、ニュースになった。

 人と違うことを恐れないでほしいと、私は思う。違いがあっても、それはその子の個性となり、素晴らしい可能性をも含んでいるからだ。

 人工呼吸器をつけながらもコンピューターを使い、一般の学校へ通う子どもたちに出会うことがある。その姿は、生命の素晴らしさと豊かな可能性、そして、私たちに不安や恐れを手放し、信念を持ち続けることの大切さを、教えてくれているような気がしてならない。(英国在住写真家/ユミコ・リトル)

AERA 2016年12月5日号

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