
英国発、障がいがある子どもたちのための筆者のブログはhttp://ameblo.jp/childrenspecialneeds187/

異国の地で、生まれたわが子が難病にかかっていると知った。この子とどう、長い時間を歩めばいいのか。心細さに襲われた日本出身の母親を支えてくれたのは、「子どもホスピス」発祥の国の懐の深さだった。
不安や恐れほど、厄介なものはない。考えれば考えるほど、それは大きく成長して、ついには私たちをのみ込んでしまう。けれどそうなったら、いったい誰がこの子の世話をするのだろう。
英国へと移住し出産した息子が、世界でも珍しい難病であることが昨年1月、判明。自宅看護の日々が始まった。脳の関係で目が見えず、首が据わらないなどの発育の問題に加え、背中が反り返って体全体がひきつったり、けいれん発作やよだれが詰まることによる呼吸困難が起きたりした。栄養は鼻チューブや胃ろうで摂取する。
●不快さを全身で訴え
息子は発作や痛みのあるとき、その不快さを体全体で、必死に訴えて泣き叫ぶ。痛みが和らげばと、わが子に歌った夜は10日続いた。時計の針はまるで止まってしまったかのように、ほんのわずかしか進まない。救急車で運ばれる度に、母親である私の体は、鉛のように重くなり、どうしたら自分の心を正常に保てるか、必死で考え続けた。
救いは、英国の子どもホスピスが世界でも発達していることだ。早い時期から、ミュージックセラピーや、プールで身体をほぐすハイドロセラピー、さまざまな色の光を見せたり、手ざわりの異なるものを触らせるセンソリー訓練などを受けることができ、現在少しずつではあるが、息子にもその効果が表れ始めている。私には、早期の訓練や手足の運動が脳の発達を促し、病理的な問題をも解決していく大きな可能性を秘めているように思えてならない。
ホスピスというと、日本では終末期ケアを想像されるかもしれないが、子どもホスピスは子どもたちがたくさんの愛情にはぐくまれ、成長や発達を進めていく、大切な場所でもあるのだ。
子どもホスピスは、ホスピス発祥の地でもある英国で始まった。脳腫瘍(しゅよう)の子、ヘレンを抱えた母親の看護の苦労を見かねた友人フランシスが、ヘレンを預かると、そんなフランシスの考えに賛同した人たちが「同じような重い病気の子どもを持つ家族の力になりたい」と集まって1982年、「ヘレン&ダグラスハウス」が誕生した。今では、英国全土で40カ所以上、1カ所で300~600人もの難病の子を持つ家族を支援している。
英国の子どもホスピスでは実際、どんなサポートをしているのだろうか。わが子を例に紹介したい。