ドラマ番組部 部長 遠藤理史さん(51)/ドラマ番組部部長として朝ドラと大河ドラマを統括する。写真は来年公開の柴咲コウ主演「おんな城主 直虎」の撮影スタジオで(撮影/高井正彦)
ドラマ番組部 部長 遠藤理史さん(51)/ドラマ番組部部長として朝ドラと大河ドラマを統括する。写真は来年公開の柴咲コウ主演「おんな城主 直虎」の撮影スタジオで(撮影/高井正彦)
ドラマ番組部 チーフ・ディレクター 井上剛さん(48)/「64(ロクヨン)」「LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと」(ともに15年)なども手がける。リラックスしたいときに観るのは「サラメシ」(撮影/高井正彦)
ドラマ番組部 チーフ・ディレクター 井上剛さん(48)/「64(ロクヨン)」「LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと」(ともに15年)なども手がける。リラックスしたいときに観るのは「サラメシ」(撮影/高井正彦)
大型企画開発センター シニア・ディレクター 国分拓さん(51)/「南相馬 原発最前線の街で生きる」(12年)なども手掛ける。いわく「予想を超える出来事が3回撮影できれば番組は成立する」という(撮影/高井正彦)
大型企画開発センター シニア・ディレクター 国分拓さん(51)/「南相馬 原発最前線の街で生きる」(12年)なども手掛ける。いわく「予想を超える出来事が3回撮影できれば番組は成立する」という(撮影/高井正彦)
朝ドラヒロインと日本社会(AERA 2016年11月28日号より)
朝ドラヒロインと日本社会(AERA 2016年11月28日号より)

「名作ぞろいだが、とっつきにくい」。NHKに何となくあったイメージは、過去のものらしい。生真面目さと、新進の情熱と。アラフィフ世代が今日も現場を突き進む。

 11月、まさに「じぇじぇじぇ」なニュースがヤフートピックスを駆け抜けた。2016年度上期・関東地上波テレビ局のゴールデンタイム視聴率日本テレビを抑え、NHKが1位に輝いたのだ。

 なかでも朝の連続テレビ小説、通称「朝ドラ」は高視聴率が続いている。背景にはヒロインのテーマ設定がある。

 ポイントは女性の社会進出と戦争体験だ。一時期はリアルな女性像を追求し低迷していたが、「ゲゲゲの女房」以降、「ひたむきに生きる女性」という原点回帰で復活を遂げた。メイン視聴者の50~70代女性には、現代で自己実現を目指す物語よりも、女性が働くことすら難しかった明治から大正、昭和の時代に、ヒロインが自立を求める姿や、過酷な戦争体験のほうがドラマチックで、新鮮だと歓迎されたのである。

●黒ひげ危機一発な…

 朝ドラを担当するプロデューサーたちは、自らの置かれた状況を「黒ひげ危機一発」と呼ぶ。ドラマ番組部部長・遠藤理史(りし)さん(51)は言う。

「ヒットの法則なんて分からないけれど、同じことをやったらダメだということだけははっきりしています。誰かがナイフを刺したところにはもう刺せない。新しいことを探し続けます」

 NHKドラマに新しい風を吹き込み続けているのがチーフ・ディレクターの井上剛さん(48)だ。社会現象になった「あまちゃん」の演出を担当。19年の大河ドラマでは五輪をテーマに、再び脚本家・宮藤官九郎とタッグを組むことが発表された。

 最新作「トットてれび」では同局専属テレビ女優第1号となった黒柳徹子さんの青春を通して、テレビの草創期を描いた。当時の様子を精巧に再現したスタジオセットや衣装も話題を集めたが、テレビが娯楽の王者だった時代の空気を、井上さんは直接知らない。自分の想像力で表現しきれるのか、不安もあった。ただ、

「今を嘆いて、ノスタルジーに浸りたかったわけじゃない」

 誰でも楽しめて「夢」のあるものを撮りたい。当時のテレビ業界が放つ熱や視聴者との関係性が、まさにそれだった。ドラマの中で、ある海外メディアのスタッフが黒柳さんやNHK職員に訴えかけるシーンがある。

「世の中を良くするのも悪くするのもテレビにかかっています。そんなテレビの無限大の可能性を引き出してくれるのは、放送に携わる皆さんです」

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