●長女はユダヤ教に改宗
金融界はユダヤ人社会と密接な関係がある。全米ユダヤ人協会はクリントン氏支持に回った。トランプ氏との関係修復が必要だ。
ユダヤ人を無視して商売はできない不動産業界で成功したトランプ氏は分かっている。エスタブリッシュメントの中核にいる連中とうまくやることが大統領として必要なことだと。その象徴が結婚してユダヤ教に改宗した長女イバンカ氏。夫はハーバード大学卒でやり手のユダヤ人実業家ジャレッド・クシュナー氏。選挙を仕切る有能ぶりを発揮した。新政権はユダヤ人脈が要職に就く。これまでどの政権もそうやってきた。「2%のユダヤ社会が米国を支配する」とさえ言われている。
株高・ドル高は関係修復への祝砲である。だが、経済は期待通りに進むとは限らない。
偉大なアメリカを囃してドル高になれば、輸出にブレーキが掛かる。上がり始めた金利は景気を冷やすだろう。
焦点は12月の金融政策。FRBは利上げに踏み切る可能性が大きい。
選挙は社会に分断の傷を残した。敵をつくるトランプ氏の手法は政治の混乱と経済停滞を招く恐れがある。新政権の人事でも、すでに身内の戦いが始まっている。一喜一憂する政局が、溢れるほど膨らんだマネーを右往左往させるだろう。市場は乱高下を繰り返す。政治も経済も落ち着きのない時代を迎えた。(ジャーナリスト・山田厚史)
※AERA 2016年11月28日号