4日の衆院TPP特別委員会で、数多くの問題が指摘されているTPP法案が抗議の中強行採決された。最大の交渉国・米国の大統領候補は2人そろって反対を明言。なぜ日本だけ、そんなに結論を急ぐのか。
なぜ、結論を急ぐのか──。
その単純極まりない問いの答えが誰にも分からない。
11月4日。環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案は衆院TPP特別委員会で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決された。抗議する民進、共産両党をよそに、事実上の強行採決だった。
日本と米国を含む環太平洋12カ国の間で、例外なき「関税撤廃」と、これを妨げるあらゆる各種規制や制度を「非関税障壁」として改廃することを大原則とするTPP。今年2月ニュージーランドで行われた署名式を経て、各国でその批准に向けた審議が行われている。
なぜ急ぐ必要がないのか。日本にとって最大の交渉国である米国の次期大統領候補2人が、そろってTPPへの反対を明言しているからだ。
民主党のヒラリー・クリントン氏は、当初オバマ政権が交渉を続けてきたTPPに関して「gold standard(黄金の基準)」という最大級の美辞麗句を用いて支持。
その政策を引き継ぐと明言していたが、大統領選中盤になって各国との交渉の状況が明らかになると、反対の旗幟を鮮明に打ち出した。
●ヒラリーも掌返し反対
一方、共和党のドナルド・トランプ氏は徹底して反対の立場。自身の演説「アメリカの経済的自立を宣言する」の中で、「TPPはアメリカの製造業に死を招く」「ウォール街の投資家にとっては有利なものだが、アメリカの労働者を裏切ることになる」と厳しい言葉を使って、以前は賛成の立場だったクリントン氏を牽制した。
なぜクリントン氏は態度を翻したのか。
日米の政治情勢に詳しい中野晃一・上智大学教授は、民主党の支持母体である労働組合は、TPPの締結で雇用喪失を危惧したのではないかと指摘したうえで、こう語る。