本当に農業対策に必要な予算であるならば、なぜ補正ではなく、本予算に計上しなかったのか。
永田町ではある臆測が流れている。臨時国会の会期が延長になれば、その時点で安倍総理は解散に打って出るのではないか──。
選挙になれば補正予算の意味も違ったものになると語るのは、自民党の元大臣経験者。
「先の参議院選挙で自民党は東北などの農業県で敗北した。党として、このタイミングでしっかりと補正を組んでおくことは、当然といえば当然」
また、11月1日夜、都内で開かれた自民党衆議院議員のパーティーで、「冗談を言ったらクビになりそうになった」と発言し物議を醸した山本有二農林水産大臣は、パーティーの参加者を前に次のような発言もしている。
「JAの方々が大勢おられるが、あすでも、この衆議院議員の紹介で農水省に来てもらえれば、何かいいことがあるかも知れません」
この山本大臣の発言の真意は不明だが、明らかにTPPに反対するJAを意識した発言である。言うまでもなく、自民党農水族にとってJAの組織票は、選挙における大票田だ。補正予算が選挙前の“バラマキ”と受け取られても仕方がない。
その一方で、反対する民進党の野田佳彦幹事長は、委員会採決前の10月31日の時点で、党としては「自然成立を阻むのが目標」と語り、事実上、衆議院でのTPP承認案を認める発言をした。
これにはTPP特別委員会所属の国会議員から「党として戦う姿勢が全くない」と落胆の声が漏れた。民進党は、16年参議院選挙時に発表した政策集の中で、党としてTPP参加に賛成も反対も明言していない。山本大臣の不適切発言をめぐっては委員会で抗議したものの、昨秋の安保関連法案の時のような粘り腰は、その気配すらない。
●明確な対立軸なく
10月20日。市民のためのシンクタンク「ReDEMOS」が東京・渋谷で開催したイベントで、同党の玉木雄一郎・衆議院議員は、同時期に東京10区で行われていた衆議院補欠選挙で、民進党候補がTPPを争点にしていないことを指摘され、こう発言している。