「TPP推進のグローバル資本と近しい印象だった彼女が、雇用の確保に触れTPPに反対を明言することで、自身のこれまでのイメージを刷新し、票につなげる狙いがあったのではないか」

 TPPに参加する12カ国は、署名から2年以内に国内手続きを終えなくてはならない。もし、それができなかった場合、12カ国合計の国内総生産の85%を占める6カ国が国内手続きを終えれば自動的に発効する決まりだ。しかし、最大の国内総生産を誇る米国(60.4%)と次点の日本(17.7%)が承認しなければ、この協定は発効しない仕組みになっている。

 つまり、米国が、TPP承認に否定的な立場をとる以上、日本政府が他の国々を説得したとしても、TPPは発効しないのだ。

 TPPの交渉差し止めを求め東京地方裁判所に提訴した「TPP違憲訴訟弁護団」事務局長の竹内彰志弁護士(早稲田リーガルコモンズ法律事務所)はこう警鐘を鳴らす。

「TPPは条約なので、いったん締結されてしまうと、日本の国内法を優越する効力が認められてしまう。グローバル企業の経済活動の自由と利益を保障するために、日本の国内法が全面的に書き換えられる可能性があります」

 今回のTPP交渉は、過去の自由貿易交渉と比べて、異例の秘密保持義務を課した交渉であり、極端な秘密交渉になっている。

●解釈可能な予算が成立

 強行採決をしてでもTPPを成立させたいという政権与党の目的は、実は国内の「政局」にあるとにらむ向きもある。

 10月11日に承認された平成28年度第2次農林水産関係補正予算(総額5739億円)の中に、「『TPP関連政策大綱』の着実な実施」と銘打たれた項目がある。総額は3655億円。

 補正予算のほぼ6割に相当する中身を検証すると、「次世代を担う経営感覚に優れた担い手の育成(771億円)」「高品質な我が国農林水産物の輸出等の需要フロンティアの開拓(270億円)」「持続可能な収益性の高い操業体制への転換(255億円)」など、解釈ひとつでいかようにも運用できる予算ばかりである。

「これはTPP参加によって国内農業が被る損益に対する補助金という名の手当。そうすることでしか国内農業を守ることができないのは分かりきっていますが、まだTPPそのものが成立するか否か不透明な時期。TPPが通った前提のこうした措置は思惑が別にあるのではないかと疑われても仕方ありません」(農水省関係者)

●永田町で流れる臆測

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