今、2017年度の税制改正議論の焦点になっているのが“103万円の壁”。パートで働く妻が労働時間を調整していることから、政府税制調査会は当初、「配偶者控除」を廃止して、共働きなどの働き方を問わず、夫婦なら一定額を控除する「夫婦控除」の導入を議論していた。ところが、増税になる世帯が多いため議論は白紙に。

 妻がフルタイムで働くことができない世帯にとっては、配偶者控除や家族手当がなくなるデメリットのほうが大きいからだ。

「年明けにも衆議院の解散総選挙が取りざたされる中、増税となる専業主婦世帯の反発を招くのを恐れたのでしょう」(同)

●増える「時短切れ転職」

 安倍政権の「女性が輝く社会」を追い風にするどころか、逆風が吹いた。そんな中、今度は配偶者控除を適用する対象を103万円から150万円に引き上げる案が出た。自民党の税制調査会は12月10日ごろに結論をまとめる方針だが、女性たちは、振り回されてしまっている。

 実際に子育てしながら働く女性たちはどう思っているのか。

 人材サービス「しゅふJOB」の調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)が、今年6月、「社会保険料と働き方」をテーマに行ったアンケート調査(有効回答799件)によると、今年10月から社会保険の適用範囲が拡大となったが、「今よりも年収を下げて扶養枠内に収める」と答えた人が55.9%にもなった。

「扶養枠内に収まりたい理由として最も多くの方が選んだのは、『無理のない範囲で仕事と家庭を両立させたい』という意見でした」(同総研の川上敬太郎所長)

 子育てしながら女性が働きに出るためには、やはり保育の受け皿を増やして待機児童問題を解消することが先だ。

 正規雇用で働く女性にとっても、働く環境は相変わらず厳しい。育児・介護休業法は、3歳未満の子がいる従業員が利用できる、原則1日6時間の短時間勤務(時短)制度などを設けるように企業に義務づけている。厚生労働省の調査によると、制度がある企業は15年度で約6割。ところが今、時短が適用されなくなる時期に、派遣などの非正規の仕事に変わる「時短切れ転職」が増えているという。

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