妻が働く際には、“106万円の壁”ともう一つ大きな壁があり、それを考慮して働くべきかどうか決めた方がいいという。
それが“103万円の壁”だ。
「年収103万円まで所得税は課税されません。年収103万円の人は、給与所得控除額65万円と38万円の基礎控除を差し引くと残りは『0円』。つまり、課税する所得がないのです。さらに、夫の年収から一律、38万円の『配偶者控除』を差し引くことができます。夫にとって妻を扶養に入れれば、納める税金が少なくなる。妻の年収を103万円未満に抑えようとするのはこのためです」(北村氏)
●「夫婦控除」導入は白紙
働く時間を増やすのであれば、夫の扶養の範囲内で働くケースと、扶養枠を超えて働くケースを比較してから決めた方がいいという。
「ミキさんのケースで実際にどれだけ社会保険料と税金が増えたのか計算してみました。夫は年収が500万円で、その時、ミキさんは年収103万円で働いていました。仮に1千円の時給で労働時間を年間170時間増やし、年収を120万円にしたら、世帯での手取り額がトータルで2万5千円ダウンしてしまうことがわかりました」(同)
社会保険料の負担だけでなく、夫の所得から控除される「配偶者控除」がなくなったことで税負担が増えた。さらに、夫の会社から支給されていた月1万5千円の「家族手当」が打ち切られて、夫の年収は500万円から482万円に減ってしまったのだ。
「家族手当」とは、「扶養手当」ともいい、妻の年収が103万円未満などの社員に、独自の基準で給料に上乗せして支給している企業が多い。
ミキさんのケースで年間17万円の収入を増やすため170時間働くと、世帯の手取りは減る計算になる。これが“103万円の壁”を超えるということだ。妻の年収が130万円になると、社会保険料や増税分を手取り分がわずかに超えてくる。ただし、これ以上働く時間を増やすと子育てにも影響が出てくる。