
仕事に追われているときに限って、体のどこかが気になり始める。そんな経験をしたビジネスパーソンは少なくないだろう。病院に行くのもいいが、「2時間待って診療3分」では、あまりに非効率。ならば、市販薬があるじゃないか──そう思ったアナタ、「クスリ」との付き合い方を考え始めるチャンスです。
東京都内の会社員の女性(32)は、ちょっとした不調なら、薬局で買う薬で済ませている。
「平日に仕事を抜け出して病院に行くのは難しいし、会社近くで夜間も開いているクリニックも増えてはきたけれど、混んでいます。病院に行っても診察はあっという間のことが多くて、待ち時間を考えれば、風邪くらいなら薬局で薬を買ったほうが断然、コスパがいいんです」
医薬品は医療用、一般用に分けられる。医療用は、医師が自ら使うか、処方して患者に出す薬で、効き目が強いが、時に重大な副作用を起こす可能性がある。一般用は市販薬とも呼ばれ、処方箋なしに買えるが、効き目は穏やかで、副作用も比較的少ないとされる。
全国の薬局の数は約5万8千。コンビニエンスストアより多い。忙しい働く世代にとっては、病院やクリニックに行くよりも、近所の薬局やドラッグストアで手に入る手近な市販薬のほうが使い勝手がいい。
●よく効く市販薬増加中
その上、市販薬の質も良くなってきている。
「医療用医薬品の成分が市販薬に転用され、薬局などで買えるようになってきました。市販薬の質は、かつてとは全く変わったといっていいでしょう」
薬剤師で、慶應義塾大学教授の山浦克典さんが言う。
解熱鎮痛薬「ロキソニンS」、胃腸薬「ガスター10」……。
薬局やドラッグストアにずらりと並ぶ市販薬の中でも、ひときわ目立つ扱いのこれらの薬は、かつて医師が処方していた薬だ。それらが、薬局でカウンター越し(Over The Counter)で買えるようになったことから「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる。
これまでに承認されたスイッチOTC医薬品の成分数は82。ここ10年で急増し、薬局などに並ぶ市販薬全体の1割以上を占めると見られている。
医療用医薬品に負けず劣らず、よく効く市販薬が増えてきたのだ。だが当然、その分リスクも高まる。