しかし、新ルートの真下には、住宅密集地や繁華街、小中学校などもある。高度は新宿、中野両区上空で千メートルを下回り、渋谷、港、目黒、品川各区では東京スカイツリー(634メートル)より低空を飛ぶ。さらに、大井町駅(品川区)ではわずか305メートルと、東京タワーより低高度で進入してくる。
現在の南風・悪天候時のルートでも、江戸川区の住宅地上空を約1200~600メートルの高度で降下するが、そこから先はほとんど海上の飛行だ。
●地下鉄車内並みの騒音
まず懸念されるのが騒音だ。着陸時に予想される騒音は、新宿・中野付近で約63~70デシベル、麻布・恵比寿・渋谷付近で約68~74デシベル、大井町付近では約76~80デシベル。「窓を開けた地下鉄の車内」が80デシベルとされる。
落下物も心配だ。南風時に「B滑走路」から離陸した航空機は、川崎市の石油コンビナート上空を通過することになる。離陸後の3分と着陸前の8分の計11分は「魔の11分」と呼ばれ、重大事故の8割が集中している。
先の柿沼氏はこう述べた。
「なるべく最新の静かな飛行機を増やし、整備・点検の徹底をあらゆる手法を尽くしてやっていこうと考えています。石油コンビナートの上であろうがなかろうが、飛行機は絶対に落ちてはならないものという観点で、しっかり安全性を守っていくのが、われわれのスタンスです」
だが、航空評論家の秀島一生さんは厳しく批判する。
「本末転倒。まずは騒音や落下物、テロの危険性まで考えてルートを考えるべき。そもそも、人口が密集している市街地をここまで低空で飛ぶのは世界的に例がない。ひとたび何か起きたら大変な事態になります」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2016年9月12日号
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