4月中旬、築地移転に反対する市民団体が豊洲移転に関するアンケートを実施した。回答の8割が移転の延期・撤回を求める内容。フリーの記述欄には、こんな言葉が目立った。

「繁忙期である11月7日の移転を計画するなんて、現場のことをまったく考えてない」

 東京中央市場労働組合の中澤誠執行委員長(51)はこう話す。

「不安は出入り業者も同じ。豊洲は都心に出る道が1本しかない。ある運送会社がシミュレーションしたところ、交通渋滞で午前中に渋谷や池袋へ荷物を運べないと嘆いていました」

 移転反対の声は、場外からも聞こえる。築地で仕入れた生魚にこだわり、さつま揚げなどを製造販売する笹塚愛川屋店主の周東俊明さん(45)はこう話す。

「豊洲は道路をはさんで卸、仲卸、青果と建物が分かれていて、買い物が不便になる。築地は野菜にしても、果物にしても、折箱などの小物に関しても、ワンストップで買える」

 また、周東さんはバブル期を思い出し、こう続けた。

「業者の数も車の量もすごかった。毎日が(上野の)アメ横の年末状態だったが、今は年々店も減り、そもそも移転する必要があるのかすら疑問だ」

『ミシュランガイド東京2016』に掲載されている寿司店28店にアンケートを実施した。8店から回答があり、移転賛成が2、反対が5、無回答が1だった。反対の理由の多くは、土壌汚染や施設に関する不安だ。

 三つ星寿司店「すきやばし次郎」代表取締役の小野禎一(よしかず)さん(57)は、移転に反対の立場だ。魚はすべて築地市場から仕入れているという。

「産地直送の魚は使わない。30年以上毎日築地に通い、自分の目で見て、自分が納得した魚だけを仕入れている。今は自転車で通っているが、豊洲移転を見越して既に専用の車まで準備している」

 移転問題について尋ねると、語気を強め、こう話す。

「何十年と毎日築地に足を運ぶことで、仲買人との信頼が深まり、納得できる魚が入るようになる。土壌汚染問題、費用の問題、これまでの経緯……知事は数年で辞職して、あとは知らん顔でいいのか。歴代の知事も含め、説明責任がある」

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