しかし、予備試験は合格率が5%に満たない狭き門。15年は3.8%だったが、中大法学部生13人がこれを突破した。全国で12人の現役学生が合格した15年の司法試験でも、うち2人は前出の安部さんを含む中大法学部生。「法科の中央」にふさわしい実績を取り戻したのだ。
「大学1年の時に、予備試験を通った先輩の話を聞いて影響を受けた。それがなかったら弁護士を目指していなかったでしょう。法科大学院進学は家庭の事情で厳しかったので」
と安部さんは明かす。課外講座を主宰する法職事務室は、炎の塔で学び、司法試験や予備試験に通った人を選任講師として雇う。試験にはトレンドがあるからだ。安部さんも言う。
「受験したばかりの先輩から指導を受ける機会は貴重だった」
学部時代に切磋琢磨(せっさたくま)して、必要な知識や考え方を身に着けておくことは、法科大学院ルートの底上げにもつながっている。中大の法科大学院は、法科大学院ルートでの司法試験合格者数でトップに立つ。中島学部長によれば、重視しているのは数よりも累積合格率。
「7割から8割で維持していくのが目標です。受験生が大学院を選ぶ基準は、自分が合格できるかどうかですから」
実は現在、法学部と法科大学院が同じキャンパスにないのは難関ロースクールでは中大だけ。昨年策定された中期事業計画で法学部の都心回帰を打ち出した中大。22年には移転が実現する予定だ。「白門完全復活」は目の前だ。(編集部・鎌田倫子)
【基礎DATA】
所在地:東京都八王子市
開設:1885年
定員:1370人
初年度納付金:120万9400円
就職先:東京都、三菱東京UFJ銀行、みずほフィナンシャルグループ、国税庁、神奈川県、大和証券グループ本社、損保ジャパン日本興亜、三井住友銀行、法務省、埼玉県ほか
著名な卒業生:
石川祐希※在籍中(バレーボール日本代表)、逢坂剛(作家)、渡辺喜美(政治家)、菊地幸夫(弁護士・タレント)
※基礎データはすべて、『2017年版大学ランキング』、各大学の公式サイトなどから
※AERA 2016年6月6日号