女性が柔軟な働き方を選べるようになる一方で、男性の働き方はどうなっているのか。いまだ「夫が大黒柱」というケースが多く、男性が仕事をセーブし、家事・育児をするのは難しい現実がある。
会社経営者の男性(48)はぼやく。
「妻の年収がもっと高ければ、ここまで働かないですよ」
OECDの13年の調査では、日本は男女の賃金格差が加盟国で3番目に大きい。収入が低い女性のほうが仕事を辞めたりセーブしたりするのが「合理的」な構造のため、「男は仕事、女は家庭」という意識が変わりづらい。
『男が働かない、いいじゃないか!』の著作がある、武蔵大学の田中俊之助教(男性学)は訴える。
「女性向けの施策はすでに出尽くしている。メスを入れるべきは、男性の生き方とセットになっている長時間労働と終身雇用です。『最低一日8時間・週40時間×40年間労働』、ここを変えなければ、抜本的な解決は難しい」
●出世できなくなるから
人材会社に勤める男性(31)は言う。
「夫婦でバランスをとって共働きを維持していくことが最優先。最近ローンで家を買ったので、妻が公務員であることの心強さは手放せません」
保育士の妻(29)が遅番の日は、長女(2)の保育園の迎えから晩ご飯、寝かしつけを男性が担当する。事前に社内のイントラネットに書き込むため業務に支障が出ることはあまりないが、時短勤務をしているのは女性ばかりで、早く帰っている男性は自分だけ。平均年齢29歳の会社なので前例もなく、仕事の「序の口」である午後6時に職場を出ることが今後のキャリアにどう響くのか、不安がよぎる。帰宅後もスマホにメールが入ると、長女の面倒を見ながら気はそぞろ。残業できる日は他の人よりも遅くまで頑張ってしまう。
男性には「滅私奉公」を求める企業も多いなか、女性の職場進出に一歩も二歩も遅れている、「男性の家庭進出」。少数派ゆえの悩みを一人で抱え込む夫は少なくない。