「男は仕事、女は家庭」の性別役割分業は高度経済成長期に確立し、機能してきたものだ。しかし、片方が仕事でめいっぱい疲弊し、片方は家事や育児を一手に引き受けて追いつめられるような「分業」は、これからの時代にはリスクが高い。
●生活体験を「武器」に
前出の専業主夫になった男性には、夫婦共通の考えがある。会社員であることにこだわらず、片方がキャリアを降りるときはもう片方が支え、逆もある。長く働き続けるために、夫婦で支え合っていくということだ。
男性は専業主夫になってから、毎日晩酌しながら子どもと晩ご飯を食べる時間が至福のひとときになった。保育園のママ友たちとお茶を飲み、スーパーで財布のひもが緩む瞬間も実体験した。食品のマーケティング関連の仕事をしていたことから、この生活体験がキャリアの「武器」になると考えた。
退職から1年後、フリーのプランナーとして独立を宣言すると、さっそく古巣から仕事が入った。
「転職市場に『育休経験者、主夫経験者求む』といった求人が出るようになれば、男性もキャリアを柔軟に考えられるようになるはずです」
結婚、出産、育児、介護など人生のステージごとに、男女ともに仕事の質・量を柔軟に変えることができたら、もっと人生は豊かになる。共働きという後ろ盾が、その「挑戦」を可能にするのだ。(AERA編集部・小林明子、石田かおる)
※AERA 2016年5月30日号