



大地震に見舞われた際、何が生死を分けるのか。九州・熊本大地震で2回記録した「震度7」の教訓は、これからも地震大国・日本で暮らす必須要件といえる。個人の防災スキルだけでなく、社会の総合力も含め、八つの知恵を紹介したい。(編集部・渡辺豪、山口亜祐子、岡本俊浩)
【地震直後】寝室で怖いのは圧死 家の耐震化ムリなら1カ所だけの補強も
台所にいた母の目の前で食器棚が倒れ、ガラスが飛び散った。
熊本市内の自宅マンションで被災した女性( 39 )は、4月16日の本震の恐怖をこう振り返る。
「阿蘇山の噴火は気にしていたけど、まさかこんな地震が来るとは思ってもいなかった」
九州・熊本大地震は4月14日と16日の2回にわたって最大震度7を記録。いずれも夜間に発生し、自宅で亡くなった人の多くは家屋の倒壊による圧死や窒息が原因と報告されている。
「山ほどの防災グッズを用意していても、家が倒壊すれば意味がありません。倒壊家屋は命を奪うだけでなく、火災の原因になったり、道路を塞いで救助活動の妨げになったりします」
と訴えるのは、日本防災士会の橋本茂常務理事だ。
鉄筋コンクリート造りでも、耐震性の低い建物は「倒れるものが多くなる」とされる震度7に備えるには、住宅の耐震化がもっとも効果的だが、場合によっては数百万円の費用がかかることもあり、十分進んでいないのが実情だ。特に、高齢の単身者や夫婦だけで暮らす家では躊躇する傾向が強い。
ただ、本格的な耐震補強ができなくても、身を守る対策はいくつかある。名古屋大学減災連携研究センター長の福和伸夫教授は、(1)寝室など屋内の1カ所に絞って補強する例を挙げる。
金属加工メーカーのニッケン鋼業(東京)が開発したのが「防災ベッド」。ベッドの上をアーチ状に覆った鋼鉄製のフレームは、真上からの重さ10トンまで耐えられる。大人2人で2~3時間あれば組み立てられ、20万円(税別)から販売している。
●防災グッズで手軽に
震度7に備えてもう一つ、やっておきたいのが、(2)家具の転倒防止だ。東京消防庁のまとめでは、新潟県中越地震など2003~08年に発生した最大震度6弱以上の七つの地震で、家具の転倒・落下・移動が原因のけが人の割合は3~5割を占めた。
福和教授は、都市圏に多い高層建物に潜む危険性を指摘する。
「熊本の地震では長周期地震動の階級4を観測しましたが、タワーマンションがあったら強い揺れを受けていたはず。家具の転倒防止策は大事です」
家具の転倒防止グッズは、ホームセンターなどでよく見かける。カインズホーム南砂町SUNAMO店(東京都江東区)では、防災用品コーナーに家具と天井の間の突っ張り棒や、薄型テレビなどの底面に貼る粘着マットなどが並ぶ。値段も数百円から千円台と手ごろで、今回の地震後は「まとめて購入される方も多く、品薄状態が続いています」(曽根佑司店長)
とはいえ、熊本県益城町の女性(83)からはこんな声も聞かれた。
「タンスやテレビ、家具はすべて倒れてめちゃくちゃ。地震用の転倒防止金具をつけていたのですが、そんなものすべて吹き飛んで意味がありませんでした」