教育の成果を「大学進学率」で見れば、やはり東京が圧倒的に高い。大学の数が多いことと無関係ではないと推測されるが、大学の数と同じ「多様な選択肢」の中から「最良の選択をする」ことが、親たちにプレッシャーとしてのしかかる。

 兵庫県出身で都内在住の専業主婦(44)は今春、長男を慶應義塾大学付属の中学校に入学させる。女性曰く、選びに選んだ三つの塾の効果が大きかった。

「塾選びのためにあらゆる情報を集めた。教育関連サイトは中毒になるほどチェックした」

 慶應付属一点狙いは、「人脈という点で強い」と感じたからだ。同じく関西出身の夫(46)は会社役員。彼は現役で早稲田大学にも合格したが、本命だった京都大学に進学。ところが東京では「どうして早稲田にしなかったの?」と尋ねられ驚いた。どこまで「東京至上主義」なのか。

 だが子育てでは、確かに東京にいれば選択とお金次第で最良の教育を与えられるという実感がある。気になったのは、関西では重要視される、ある能力が身につくかどうか。この男性は言う。

「コミュニケーション能力です。関西の小学校では、面白い子がクラスで一番えらかった。会話の駆け引きで商売に必要な“えげつない”泥臭さも学べた。せめて家の中では、と『オチのない話』を禁止しています」

(ライター・三宮千賀子)

AERA 2016年3月28日号より抜粋

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